社会と横河電機の未来を見つめ
情報システム本部から広がる構想CASE07

横河電機株式会社Yokogawa Electric Corporation

一般財団法人ジェイティ奨学財団

プロジェクト化の予算を確保し、
研修を研修で終わらせない

―情報システム本部における今回の取り組み「フロンティア・プロジェクト」は、社内の人事部門ではなく、自部門が主体となって実施されました。デザイン思考のエッセンスが盛り込まれた未来志向型のプロジェクトですが、この施策を行った経緯は。

北原:2014年になりますが、当本部の従来の業務であったシステムの運用を外部の協力会社にアウトソースし、社内はコア機能である企画に注力するという大きな舵取りを行いました。もともと情報インフラを維持する部門であり、守りが中心でした。それを攻めに転じるきっかけをつくりたかったのです。

それからは「我々は企画部隊である」と打ち出してはいますが、企画に携わっていなかったメンバーもいます。企画力を高めることはもちろん、「自分たちは付加価値の高いものを創出していくのだ」という意識の醸成が急務でした。

情報システム本部 情報システム部 部長 北原卓 氏
情報システム本部 情報システム部 部長 北原卓 氏

―「フロンティア・プロジェクト」の概要を教えてください。

衛藤:情報システム本部のメンバーから14名を選抜して行いました。当時はグローバル基幹システムの入れ替えで多忙を極めていたこともあり、そのプロジェクトのメンバーは対象とせず、システム企画などを担当していたメンバーを中心としました。期間は5ヵ月間です。テーマ開発やアイデア開発のワークショップを経て、チームごとに企画を立案、プレゼンまで行いました。

北原:企画の中身については、会社に貢献できるシステムやサービスであれば部門方針になかったものでもOKにしました。これまで、情報システム本部としてはAIやIoTといったデジタルイノベーションの領域には踏み込んできませんでしたが、最終的に出てきた企画は、そうした新しい技術を使ったものばかりでした。

通常の研修と決定的に違う点は、企画を立てておしまいではなく、企画の実現をゴールに設定したことです。普段の業務の中では、企画審査や設計審査といったプロセスを経て企画をかたちにしていきますが、これと同様のスキームにしています。

実現を目指しますから、予算も確保しました。すぐれた企画を出しても予算がないからやりませんということでは参加者のモチベーションも上がりません。

衛藤:5ヵ月間という長期にわたる施策でしたが、この間に限り、参加者には「20%ルール」を適用し、業務時間の2割をプロジェクトに使うことを認めていました。通常業務とは気持ちを切り替えてプロジェクトに集中できるよう、毎週金曜日に専用の場所を用意。執務エリアから少し離れたところにある会議室を参加者が自由に使えるようにもしました。

「やるべき」よりも
「やりたい」からはじめる

―企画するものや時間の使い方など、参加者自身にある程度の裁量が与えられています。自由度の高い研修ですが、参加してどのように感じましたか。

森下:率直に言うと「楽しかった」。研修とはいえ仕事の一環ですし、適切な表現ではないかもしれませんが、これに尽きますね。通常業務で企画を立てる場合、情報システム本部としてやらなければならないことを最優先して物事を考えます。「フロンティア・プロジェクト」では、本当に自由に、あらゆる観点から物事を考える機会を持つことできたので、本当にエキサイティングでした。

鍋島:先にも述べたように、実にさまざまなワークショップがありましたが、研修がスタートしてしばらくは、正直、これが何につながっていくのかがつかめませんでした。しかし、続けていくうちに確実に意識は変わっていきました。

情報システム本部 本部室 マネージャー 衛藤弘樹 氏
情報システム本部 本部室 マネージャー 衛藤 弘樹 氏

特に情報システム部門は、いわゆるITインフラの管理を行っているわけですから、普段の思考のフィールドは問題の解消に軸が置かれています。そうではなく、自分でイノベーションしていくことの面白さが見えてきました。しかも、テーマのヒントを社内だけではなく、社会から探しても良い。こうしたスケールの大きさも醍醐味でした。

北原:参加メンバーが普段からやっている業務は、会社や部の方針から落ちてくる施策。各々がクリエイティブな思考を発揮していくというよりは、部の方針に従って決められた枠内で遂行するものがほとんどです。この研修はいつものスタイルとは異なることもあり、戸惑いもあったと思います。しかし、視点を社内から世の中へと広げられるようになったことで、次第に積極的に取り組めるようになっていったという印象があります。

丸山氏のインタビュー風景

―研修の一環として他社への訪問も行われました。「視点を広げる」という意味では、刺激を受けたのでは。

鍋島:外部のITセミナーに参加するなど、日ごろから自分でも外に目を向けようとはしていました。でも、自分で見つけてきたものというのは、実は自分のいつもの枠組みからは離れていなかった。そうではなく、ポジティブな意味で「与えられた機会」に飛び込むことで発見がありました。

例えば、「自分が外で得た気づきを社内での企画に落とし込んだらどうなるか」など、業務の枠にとらわれない視点を融合させるとでもいうのでしょうか、そこから新しいものが生まれることを知りました。

会社の枠組みを越え、自分は何をやりたいのか、この社会で実現したいことは何か、それを考えられるようになった。「インサイドアウト」「アウトサイドイン」という概念を実際に体験したことで、これほど変わることができるのかと思いました。

「夢物語」をイノベーションに
つなげていく手ごたえ

―最終的に、どのような企画を立案したのでしょうか。

森下:私たちは、まずAIをお客様サポート業務に活用できないか、と考えました。検討の結果、B to Cの企業では盛んになっていますが、チャットボットを社内ユーザー向けのヘルプデスクに導入し各所からの問い合わせに対応するという企画を提案しました。私は普段、グローバル・ガバナンスに携わっていて、ITの最新技術とはほぼ無縁。この研修がなければ立ち入ることのなかった領域でした。

構想段階でメンバーと話し合っていると、やりたいことがどんどん広がっていって。しかし、企画に落とし込もうとしたとき、非現実的だったり、予算に見合わなかったりと、大きな軌道修正が必要になったこともありました。

衛藤:自分の専門性を究め、やるべき仕事を遂行する力も大切ですが、それ以外の関心や楽しみがあったほうが、仕事はもっと面白くなると思っています。

情報システム本部 情報企画推進部 ITガバナンスグループ マネジャー 
森下真弓 氏
情報システム本部 情報企画推進部 ITガバナンスグループ マネジャー
森下 真弓 氏

最初はたくさん夢を見てもいい。そこから出てくるアイデアもあるはずですから。ただ、実現しようとすると、生みの苦しみが必ずある。そうした一連のフローを経験できたことも、参加メンバーにとって収穫だったのではないでしょうか。

鍋島:私たちのチームが立てた企画も、最初は完璧に夢物語でした。「ことばがなくても通じ合える世界をつくれないだろうか?」というアイデアに始まり、「会社に貢献できる企画を」という現実に戻ったとき、「グローバル・コミュニケーション」というキーワードが出てきました。

その後、社内のグローバル営業部署を含む、いくつかの事業部にヒアリングしたくさんのヒントを得ました。例えば、語学が堪能なメンバーでさえも、海外出張時に現地の非ネイティブスピーカーの英語が聞き取りにくかったり、限られた時間内で議事録をまとめることに苦労していたり。ヒアリングから見えてきたものが「議事録を英語で自動的に作成するツール」です。

今の自分の業務にあるような課題解決型の企画だったら思いつきもしなかったはずです。研修でウィル・シードさんに教えていただいた「視点をずらして考える」という手法も大いに役立ちました。この手法は、日常の業務にも取り入れるようになりました。

情報システム本部 情報企画推進部 ITガバナンスグループ 鍋島孝聡 氏 情報システム本部 情報企画推進部 ITガバナンスグループ 鍋島 孝聡 氏

―研修最後のレビューでは、どのような印象を持ちましたか?

北原:どのチームの企画も期待以上でした。何よりも積極的に楽しむ姿が印象的でした。いつもの業務の枠組みですと、いわばトップダウンの構図がぬぐいきれない。でも、今回のプレゼンでは皆が自分の意見をきちんと主張していました。

普段の彼らなら一歩ひいてしまうようなこちらからの厳しい質問や疑問に対しても、臆せずに答えようという姿勢が見受けられました。仕事の与え方によってこれほどまでにメンバーの姿勢が変わるのだと、我々も発見の多い研修でした。

衛藤:当初の想定では、コンペ形式で順位付けをしようとしていました。でも、どの企画も可能性にあふれ、つぶしたくなかった。トップになった企画だけを通すのではなく、全チームのものを採用することにしました。

森下:一つだけ選ばれると思っていました。いただいたアドバイスにしても、ネガティブなものはなかった。手前味噌になりますが、自分たちもアイデアをきちんとアウトプットできていたのかもしれません。今は実現に向けて、次のステップに進んでいる最中です。

―「フロンティア・プロジェクト」を踏まえた今後の展望は。

衛藤:目の前の仕事だけをしていれば未来が明るくなるとは限らないと思っています。これは極論になりますが、「部門の枠組みを取り払って仕事をしていきたい」、そんな気概を持ったメンバーが出てきてもいいとさえ思っています。これからも外に目を向け、刺激を受け続けられる場を提供していきたいですね。

島岡氏のインタビュー風景

実態がつかみにくいデザイン思考のプロセスを無意識のうちに体感しながら、新たな視点を得る「フロンティア・プロジェクト」。溌剌とした参加者のお二人から、この研修の充実ぶりがうかがえました。メンバーの好奇心を引き出すことができれば、イノベーションを起こせる可能性もある。それをまざまざと見せつけられるプロジェクトでした。

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