OJTが機能しない・・・それは古くて新しい課題

労働人口が減少の一途を辿る昨今、採用した人財をいかにチーム・組織の一員として戦力化していくかは、企業にとって重要な課題です。ところが、人が成長する主戦場であるはずの現場で、OJT(On the Job Training)が機能していないという声をよく聞きます。かつては「OJTこそが日本企業の競争力の源泉」と言われるほど、当たり前のように機能していたOJT。「OJTが機能しない」それは多くの日本企業が抱える古くて新しい課題です

なぜOJTは機能しないのか?

OJTが機能しない要因は、単なる人の意識の変化だけではありません。過去遡ること数十年の環境や構造の変化にも起因します。

仕事の質が変わり、「指導」が難しくなっている 元々OJTの概念が生まれたのは、製造現場でした。しかし現在、この教育手法は他のマニュアル化できない業種にまで拡大しています。さらに近年、より複雑化したビジネス環境の中で、新人に与える業務の難易度があがると共に、指導する側の先輩・上司も未知の仕事や答えを知らない業務が増えており、指導することが難しくなっているのです。
育成経験の少ないトレーナーが多い トレーナー適齢期といわれる20代後半から30代半ばの年代は、採用抑制期に企業に入社しました。そのため、その後しばらく後輩が入社してこない、自部署に配属されなかった等が理由で、育成経験を得る機会が極端に少ないといえます。育成の方法がわからず、どうしたらよいのかわからないと嘆くトレーナーは多く存在します。
新人との世代間ギャップが広がり、関係構築が難しい 従来、新人と先輩との関係は、非公式な場も含め構築されてきました。しかし、近年入社してきた新入社員は「ゆとり世代」と呼ばれる世代です。先輩・上司側が感じる世代間ギャップは拡大し、新人側も異世代とのコミュニケーションが苦手な傾向があるため、なかなか関係構築がスムーズにおこなわれません。「指導」以前にコミュニケーションがうまくいかないケースも多くあります。

トレーナーが抱える問題とは

現場のトレーナーは以下のような問題を抱えています。OJTが機能しない原因は、企業・組織により異なることも多く、自社の「OJTが機能しない原因」を探るためにトレーナーの抱える問題を知ることは非常に重要です。

・業務と育成のバランスが取れず育成に時間が割けない ・何をやればよいのかわからない ・育成スキルが不足している ・新人との関係構築が難しい ・取組みが属人化しており、育成活動のレベル差がある ・周囲の教育が得られず、トレーナーが孤独である

短期と中長期のOJT支援により「育成の循環」をつくりだす

このように、機能していないOJT活動に対し、人財務開発部門が期待される役割は、「短期」と「中長期」の支援があると考えます。

まず「短期」の支援は、単年のOJTペアの育成目標が達成されるための支援をすることです。「トレーナーも不安であること」を念頭におき、トレーナーが欲しているOJTの最低限のイロハを提供することから始めます。またトレーナーだけではなく「上司・トレーナー・新入社員」の3者が育成目標に対し、共通の認識を持ちスタートできるための場の設定や仕掛けが必要です。

そして「中長期」の支援は、現場における「育成の循環」創出を意図したOJT施策を設計することです。先輩・上司から良い育成を受け成長した新入社員は、その指導そのものが自身の後輩ができたときの指導方針・指導方法となります。また、きちんとしたOJTを行った経験を持つ者が増えれば、トレーナーではなくとも、先輩として積極的に指導に関与することができ、組織ぐるみでの育成が実現できます。

真に育成風土を構築するならば単年のOJT活動で得たその企業独自のノウハウをいかに翌年以降に蓄積・継承するか、そして携わった人員をいかに風土醸成の構成員として参画させるかが重要になってきます。「中長期」の支援は見落とされがちなポイントであり、取り組めている企業は多くありません。しかしそれこそが「育成風土の醸成」につながる重要な取組みであり、人財開発部門に期待されることではないでしょうか。

できることから実践していく

弊社では「育成風土の醸成」を目指して多くの企業様とOJT活動の改善、制度設計に取り組んでおります。目指す姿・レベルはありつつも、各企業の課題や現在の風土に合わせ、「できることから実践(支援)していく」ことが、確実に前進するための唯一の道であると感じています。