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新人が成長するOJTトレーナーのコミュニケーションとは 第7話

OJTは単なるコミュニケーションではなく、その目的はあくまで育成であるが故に、トレーナーは様々なジレンマに向き合うことになります。本コラムでは新人トレーナーが葛藤に遭遇し、乗り越え、成長していく一年間のストーリーとしてOJTに対するヒントをまとめました。

ウィル・シードがOJTトレーナーに研修を行う中、ご質問が多い項目として「叱る」があります。特に育成する側として「伝えるべきこと」を伝えられない、伝え方がわからないという悩みも多いようです。本シリーズでは育成上のコミュニケーションとして重要であるものの、トレーナーが難しさを感じている「叱る」にフォーカスを当ててストーリーを読んでいきたいと思います。

7ヶ月目:叱る態度

【登場人物】
鈴木佐和子(28):飲料メーカーの商品開発部に勤務。入社6年目。圭太のOJTトレーナー
田中圭太(22):商品開発部に配属された新入社員
佐藤博(38):商品開発部の課長。佐和子、圭太の上司
武藤真奈美(31):営業部のエース。佐和子の大学の先輩

【ストーリー】
圭太が入社して7か月。小春日和のうららかな天気が続いている。

圭太は、11月1日付けでトレンドリサーチ室へ異動することになった。突然の発表に圭太も佐和子も驚きを隠せない。隣同士だった佐和子と圭太の席は、離れてしまった。

(先月、振り返り面談をして、新たな目標・取り組みについて決めたところなのに…)

佐和子は会社の決定を苦々しく思った。

圭太が商品開発部から異動したことで、佐和子の仕事は一段と忙しくなった。現在、赤ちゃんの離乳食や介護の流動食にも活用できる飲料の開発を進めているが、自分の仕事で手一杯で、OJTトレーナーの仕事とのバランスが取れなくなってきていた。

そんな時、佐和子は佐藤課長から声をかけられた。

「鈴木さん、これから外出なんだけど、田中さんにお願いした炭酸飲料の糖度と酸度のデータを入れた資料、いつ頃できそうか確認しておいてくれる?」

「承知しました。すぐに確認します」

佐和子は内線電話で「仕事の件で確認したいことがあるので、席に来てくれる?」と伝えると、圭太はすぐにやって来た。

「鈴木さん、確認したいことって何ですか?」

「佐藤課長が外出されるので確認を頼まれたのだけど、炭酸飲料の糖度と酸度のデータが入った資料、いつ頃できる?」

その言葉に、圭太はハッとした表情をした。

「まさか、忘れていた?」

「あ、いえ。糖度のデータはまとめてあるのですが、酸度のデータはまだ数字を入力していなくて…」

(ありえない…)

佐和子はPCの画面を見ながら、いつもより強い口調で言った。

「田中さん、一人ひとりが責任を持って仕事をすることで、会社は成り立っているの。締め切りまでに仕事ができなさそうだったら、相談してって何度も言っているよね」

「本当にすみません…」

「佐藤課長、15時には戻る予定だから、それまでに作れる?」

「あ、はい。やってみます」

「…」

佐和子は、圭太が頭を下げ、自分の席の方へ戻っていくのを背中で感じながら、ため息をついた。

(忙しいのに、なんでこんなこと確認しないといけないのよ…)

この一連のやり取りを遠くから見ていた営業部の武藤真奈美が佐和子のところへやって来て、肩をトントンと叩いた。

「鈴木さん、ちょっとお茶しない?」

「あ、はい…」

佐和子はしぶしぶ席を立ち、真奈美と共に社内のカフェテリアへ行った。真奈美は佐和子の大学の先輩なので、忙しくても断れない。

「鈴木さん、何飲む?」

「じゃあ、ホットコーヒーを」

「OK」

2人はホットコーヒーを持って、座った。

「さっきは大変だったね」

「えっ?」

「田中さんのこと」

「ああ…」

佐和子はバツが悪そうに目を伏せた。

「社会人は、報連相が基本よね。異動でバタバタしたんだろうけどね」

真奈美がそう言うと、佐和子は「ええ」とうなずいた。

「ただ、あの叱り方では気持ちが伝わらないんじゃないかな」

「…」

「余計なことかもしれないけれど、PCの画面を見ながら叱っても、鈴木さんの想いは伝わらないよ。むしろ逆効果だと思う」

「…」

「人を育てる時には、相手の目を見ながら言葉を届けないと、届かないよ」

佐和子は恥ずかしさと口惜しさで、涙がこぼれそうになった。

<終>

9ヶ月目に続く

【佐和子のOJTメモ】
・ PCの画面を見て叱っても気持ちは伝わらない
・ 相手の目を見て、言葉を届ける

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