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新人が成長するOJTトレーナーのコミュニケーションとは 第8話

OJTは単なるコミュニケーションではなく、その目的はあくまで育成であるが故に、トレーナーは様々なジレンマに向き合うことになります。本コラムでは新人トレーナーが葛藤に遭遇し、乗り越え、成長していく一年間のストーリーとしてOJTに対するヒントをまとめました。

ウィル・シードがOJTトレーナーに研修を行う中、ご質問が多い項目として「叱る」があります。特に育成する側として「伝えるべきこと」を伝えられない、伝え方がわからないという悩みも多いようです。本シリーズでは育成上のコミュニケーションとして重要であるものの、トレーナーが難しさを感じている「叱る」にフォーカスを当ててストーリーを読んでいきたいと思います。

9ヶ月目:叱る話法

【登場人物】
鈴木佐和子(28):飲料メーカーの商品開発部に勤務。入社6年目。圭太のOJTトレーナー
田中圭太(22):商品開発部に配属された新入社員。11月にトレンドリサーチ室へ異動
佐藤博(38):商品開発部の課長。佐和子、圭太の上司
鈴木十和子(55):佐和子の母

【ストーリー】
圭太が入社して9か月。胡蝶蘭を使った迎春飾りが会社の玄関を彩り、華やかなエネルギーが感じられる。

圭太はトレンドリサーチ室へ異動してから、精力的に仕事をしている。

お昼休み。佐藤課長が佐和子のところへ来て、嬉しそうに話し始めた。

「田中くんをはじめトレンドリサーチ室の若手3人が、年末にトレンドリポートを発表したようだが、役員の間でも評判らしいぞ」

「そうなんですか!」

「レポートの切り口も斬新だし、分析力がなかなか高いようだ」

「わあ、嬉しいですね」

「ただ、相変わらず、締め切りにはちょっと遅れるようだが」

「あぁ…」

「時間を見つけて、田中くんのこと褒めておいてもらえるかな?」

「承知しました」

仕事を終え、帰宅した佐和子は湯船につかりながら考えていた。

(「田中さんのこと褒めておいて」って言われたけれど、どう褒めたら良いのかな…)

ふと、自分が新入社員だった頃のことを思い出し、OJTトレーナーが結果だけでなく、プロセスを褒めてくれたこと、才能よりも努力を褒めてくれて嬉しかったことを思い出した。

(そっか。そうやって褒めるのか。そういえば、振り返り面談の相談をした時に、佐藤課長が言っていたな。「結果はもちろんだけど、これまで頑張ってきたプロセスに焦点を当てて」って)

佐和子は「う~ん」と言いながら、天井に向かって腕を伸ばした。

お風呂を出た後、佐和子はドライヤーで髪を乾かしながら、佐藤課長が言った言葉を思い出していた。

(そういえば、「相変わらず、締め切りにはちょっと遅れる」って言っていたよね。また、言わなきゃいけないんだよな…。褒めて、叱って、褒めて、叱って…)

「あっ!」

佐和子の声を聞き、佐和子の母がビックリした顔をして洗面所に入ってきた。

「どうしたの?」

「ごめん。仕事のことでちょっと思い出したことがあって」

「なら、いいけど…」

佐和子の母が洗面所を出ていくと、佐和子は鏡に向かってクスッと笑った。新入社員の頃、褒める⇒叱る⇒褒めるという方法で叱られたことを思い出したのだ。

(私の体験に、叱り方のヒントがあったのか…)

佐和子は自分の部屋へ行き、スマートフォンで「褒める、叱る、褒める」と入力し、スクロールしながら読み進めてみると、この方法は『サンドイッチ話法』と呼ばれていることがわかった。

次の日――。

佐和子は圭太をランチに誘った。熱々のホワイトシチューが人気で、食べ放題のパンがついている。楽しく、大事な話をしたい時に選ぶ店の1つだ。

注文を終えると、佐和子は圭太に話しかけた。

「田中さん、年末に発表したトレンドリポート、すごく評判が良いみたいだね」

「あ、はい。ありがとうございます。室長がこわいんで、もう若手は必死ですよ」

「そうなんだ~」

佐和子が笑うと、圭太は苦笑いをした。

「室長が怖くても、粘り強く取り組んだからこその成果じゃない。田中さんの頑張り、本当に素晴らしいよ。周りの人にすごく良い影響を与えていると思う」

「ありがとうございます」

「でもね、田中さん、仕事の締め切り、守っていないよね?」

「あ、はい…」

「何度も言っているけれど、締め切りを守ることは、仕事の基本中の基本。遅れそうなら、早めに相談する。何も言わずに遅れると、それまで積み重ねてきた信頼が一気になくなるからね。まだ社内だから許されているけれど、社外だったら信頼を失って、取り引きがなくなるんだよ。そこ、本当にわかってる?」

「…」

「この頑張りで身につけた力は、必ず次に活きると思う。田中さんの目標を達成するためにも、その粘り強さを活かして、これからもトレンドリサーチの仕事やり続けてね」

「ありがとうございます。正直言うと、良い仕事ができれば、少しぐらい締め切りに遅れたって大丈夫だろうって甘く考えていました。でも、そうじゃないですよね。人の信頼を失うんだって、初めて思えました。自分の仕事に対する姿勢を見直します」

圭太の真剣な表情を見て、「彼はこれから変わっていくだろうな…」と佐和子は確信した。

<終>

11ヶ月目に続く

【佐和子のOJTメモ】
・ 褒める⇒叱る⇒褒めるというサンドイッチ話法で叱ると効果的なこともある

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