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OJTトレーナーの「振り返り方」 第2話

OJTは単なるコミュニケーションではなく、その目的はあくまで育成であるが故に、トレーナーは様々なジレンマに向き合うことになります。本コラムでは新人トレーナーが葛藤に遭遇し、乗り越え、成長していく一年間のストーリーとしてOJTに対するヒントをまとめました。

ウィル・シードがOJTトレーナーに研修を行う中、ご質問が多い項目として「振り返る」があります。昨今では仕事内容や職場環境に多様性が生じ、新入社員の仕事も不確実性が増してます。新入社員であっても、自ら考えて経験学習サイクルを回せることが求められるようになりました。本コラムを通じて、新入社員の成長を促す「振り返り方」について考えていきたいと思います。

2ヶ月目:定期的に振り返りをしよう

【登場人物】
中田稔(25):総合電機メーカーの商品企画部に勤務。入社4年目。佑介のOJTトレーナー
佐藤佑介(24):商品企画部に配属された新入社員。大学院卒
阿部和美(37):商品企画部の課長。稔、佑介の上司

【ストーリー】
窓の外はしとしと雨が降っている。関東地方は梅雨入りしたようだ。

佑介が入社して2か月。先月行われた育成計画の面談で、「目的やゴールから話してもらえたらありがたい…」と佑介に言われてから、稔は佑介と話すことが億劫になっていた。

(でも、必要なことは話さないと…)

稔は深呼吸をしてから、佑介の席へ行った。

「佐藤さん、昨日営業同行した時のヒアリングメモって、すぐできそうかな?」

「すぐは難しいのですが…」

「あ、そうだよね。じゃあできたらもらえる?」

「はい」

「それから、今週の金曜日10時からの商品企画会議、議事録お願いしても良いかな?」

「その日は、エンドユーザーの訪問アポが11時半に入っています。そのヒアリングメモを月曜朝に中田さんに提出することになっていますよね? エンドユーザーの訪問よりも企画会議に出た方が良いですか? 30分ぐらいなら何とか出られますけど、議事録をとるのは難しいです」

「あ、そうだった。そうだった。ごめん、ごめん。他の人に頼むわ」

「すみません。お願いします」

(俺、何やっているんだ…)

稔はバツが悪そうにその場を立ち去った。その後姿を見ながら、佑介は稔が仕事の全体像を把握しているのかどうか不安に思った。

そんな2人の姿を眺めていた阿部課長は、稔を呼び出した。

「中田さん、ちょっと良いですか?」

「あ、はい」

「OJTの件で話したいことがあるのだけど。お茶でもしながら、どう?」

「はい…」

カフェテリアへ行き、稔はホットコーヒー、課長はアイスコーヒーを注文した。

「中田さんがOJTトレーナーをして1か月ちょっと経ったけれど、今、感じていることとか、困っていることってありますか?」

「特に…」

「私には、中田さんが佐藤さんに遠慮しているというか、中田さんが少し委縮しているように見える時があるのですが…?」

「はあ」

「違うかもしれないけれど、育成計画の面談の時のこと、気にしているんじゃないかと思って」

「…」

は心の内を読まれているようで、居心地が悪かった。

「あの…佐藤さんは院卒で頭の回転も速く、特に私が教えることもないですし、彼のOJTトレーナーは他の人がした方が良いのではないかと…」

「中田さん、私は中田さんにやってほしいの。佐藤さんのOJTトレーナーは中田さんに続けてもらいます」

阿部課長はきっぱりと言い切った。

「でね、佐藤さんを育てる上で2つ提案があるのですが」

「…はい」

「1つは、佐藤さんに指示を出す時に、仕事の全体像を見せて、これからやってもらう仕事がどの部分に当たるのか、何のためにやるのかを話してもらえたらと思うのだけど。その方が、佐藤さんが納得して動くのではないかと」

「はい…そうですよね」

「もう1つは、佐藤さんと一緒に、定期的に仕事の『振り返りの時間』を作ったらどうかと思っています」

「振り返りですか?」

「そう。振り返りです。内省とかリフレクションとも言います。自分の行動や考え方を振り返って、そこから学んだこと、気づいたことを『知恵』にしていく、というものです。業務の依頼をして進捗を確認する、という日常の会話だけではなくて、考えを聞く場を作るんです。その相手をすることでお互いの認識も揃ってくるし、関係も変わっていきます」

(お互いの認識が揃い、関係も変わる…)

「わかりました。振り返り、やってみようと思います」

その言葉を聞き、阿部課長が微笑んだ。稔の中で一筋の光が見えた気がした。
<終>

3ヶ月目に続く

【稔のOJTメモ】
・ 全体像を見せてから、仕事の指示をする
・ 定期的に振り返りをして、認識を揃える

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