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OJTトレーナーの「振り返り方」 第7話

OJTは単なるコミュニケーションではなく、その目的はあくまで育成であるが故に、トレーナーは様々なジレンマに向き合うことになります。本コラムでは新人トレーナーが葛藤に遭遇し、乗り越え、成長していく一年間のストーリーとしてOJTに対するヒントをまとめました。

ウィル・シードがOJTトレーナーに研修を行う中、ご質問が多い項目として「振り返る」があります。昨今では仕事内容や職場環境に多様性が生じ、新入社員の仕事も不確実性が増してます。新入社員であっても、自ら考えて経験学習サイクルを回せることが求められるようになりました。本コラムを通じて、新入社員の成長を促す「振り返り方」について考えていきたいと思います。

7ヶ月目:人の経験から学ぶ

【登場人物】
中田稔(25):総合電機メーカーの商品企画部に勤務。入社4年目。佑介のOJTトレーナー
佐藤佑介(24):商品企画部の新入社員。大学院卒。11月に商品企画第二部へ異動
阿部和美(37):商品企画部の課長。稔、佑介の上司
市川洋介(35):商品企画第二部の課長。佑介の上司

【ストーリー】
佑介が入社して7か月。紅葉が美しい季節になった。

11月1日付けで組織改正が行われ、商品企画部は取り扱う商品によって一部と二部に分かれた。稔は一部、佑介は二部に配属され、席も離れることになった。

(組織改正はあったけれど、上司は阿部課長のままだから、これといって変わったことはないな…)

稔はそんなことを考えながらトイレへ行くと、佑介にバッタリ会った。佑介の表情がさえない。

「あれ、佐藤さん、どうした?」

「中田さん…」

「ん?」

「ちょっと、話を聴いてもらっても良いですか…?」

「話…? もちろん良いですよ」

(何だか様子が変だな。午後から会議だけど、時間を調整して…)

「じゃあ、早めのランチでどうかな?」

「はい。できればカフェテラスではなくて、会社の外へ行きたいのですが…」

「了解です。11時30分から、早めに行こうか?」

(何があったのかな…)

稔は佑介を心配しつつ、初めて佑介から声をかけられたので、少し嬉しく思っていた。

時間になったので、稔と佑介は会社の外に出た。

「そば屋で良いかな?」

「はい」

店に入り、稔は温かい肉そばを、佑介はざるそばを頼んだ。

「佐藤さん、話したいことって?」

「実は、市川課長のことなんですが・・・」

「商品企画第二部の?」

「はい・・・。阿部課長とやり方がまったく違うんです。課長はいつまでに何をやるかという指示が明確でしたよね」

「そうだね」

「市川課長は『自分で考えろ』というのが口癖で。提出物も締め切りの2日前に出さないと、『何で出さないんだ』って言うんです。だったら、もっと細やかに指示を出せば良いし、2日前に締め切りを設定すれば良いと思うのですが・・・」

「そっか。上司が変わるとやり方も変わるからな。戸惑うよなあ…」

稔がつぶやくと、佑介はコクンとうなずいた。

「実は以前、僕も似たような経験があって。入社3年間は営業部にいたのだけど」

「えっ? 中田さんって営業部だったんですか?」

「そう。各地の量販店をいろいろ回ったのだけど、営業課長と営業部長の考え方ややり方が違ってね。課長は、営業は手数だから、とにかく訪問してPRしろ、ツベコベ言わずやれっていう考え方。一方、部長は、顔を覚えてもらって、先方の話を聴いて信頼関係を作り、紹介や問い合わせが自然に増えるような仕組みを作れ、という考え方。初めはどちらの言うことを聞けば良いかわからなくて、ものすごく悩んだんだ」

「それでどうしたんですか?」

「まずは、課長、部長の考えを否定せず、それぞれが考えている通りにやってみたんだ。その時、気づいたことや感じたことをすべてノートにつけてみたら、見えてきたものがあって。2人ともやり方は違うけれども、まずは行動の量を増やすことが大事なんだ、ということがわかったんだ」

「なるほど…」

「そこから自分なりに工夫してやってみたことをノートに書いて報告したら、『これからは中田君のやり方で好きにやってみろ』と部長から言われて」

「そうなんですか…」

「上司によって考え方が違うのはやりづらいところがある反面、自分でも考えたり工夫したり、いい成長になったと思うよ 」

「そうなんですね」

「佐藤さんの場合、佐藤さん自身の成長のために変えられることは何だろう?」

佑介は腕組みをしながら考えた。

「そうですね…。改めて振り返ってみると、これまでは指示を待つだけ、仕事に対して受け身だったかもしれません。指示を仰ぐ前に、自分が感じていること、考えていることを、自分の言葉で伝えてみようと思います」

「そうだね。自分の考えを伝えてみると、課長の意向も聞きやすくなるね」

「はい」

「それから、これからも市川課長が上司であることには変わらないよね。だとしたら、佐藤さんは、どのように仕事の進め方を変えますか?」

「課長の望んでいるように、締め切りの2日前に報告書や議事録を提出するためですよね…」

佑介は手を唇に当てて考えた。

「仕事の工程をもう少し分解して、それぞれにどの位時間がかかりそうかを見積もって、仕事をするのはどうでしょうか」

「その方法は段取り力の練習になりそうだね。仕事は段取り八分というからね」

「段取り力って大事なんですね」

佑介の表情が少し明るくなったのを見て、稔はほっと胸をなでおろした。
<終>

9ヶ月目に続く

【稔のOJTメモ】
・ 新入社員が悩んでいる時には、すぐに話す時間を作ると良い
・ 自分の経験が参考になることもある

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