人材育成に役立つ情報がたくさんCOLUMN
- 2025.01.31
- キャリア
KDDI版ジョブ型人事制度を支える人財育成とは(前半)
KDDI社では「プロを創り、育てる」ことを目的に、KDDI版ジョブ型人事制度を導入しています。人財育成についても大幅な見直しを行い、コアスキルと呼ばれる全社共通の能力評価(360度サーベイ)指標の底上げを目指す新施策「コアスキル インテンシブコース」をスタートさせました。

KDDI社が2023年度にスタートした「コアスキル インテンシブコース」は、マインドセットの醸成から知識のインプット、実務での行動変容までを一貫して支援し、経験学習サイクルを促進することで、スキルの発揮度の向上を図ることを目指した施策です。
本コラム(前半)では、施策の立案から実行までを担当したKDDI株式会社の木村健一氏に、その背景や具体的な取り組みをお伺いしします。※2024年6月に開催された弊社主催セミナーの内容を一部抜粋してご紹介します
■KDDI版ジョブ型人事制度を支える人財育成(KDDI株式会社 木村健一氏)
KDDI版ジョブ型人事制度の概要
弊社は通信事業を中核に、昨今ではDXや金融、エネルギーをはじめ、多岐にわたる分野に事業を拡大しています。その一方、少子高齢化などの影響で労働人口が減少している中、それぞれの分野で活躍できるスキルを持つ方を外部から採用する、あるいは内部の社員を育成する必要が出てきており、2020年8月、KDDI版ジョブ型人事制度を導入しました。
コンセプトは「プロを創り、育てる」。制度の軸に「KDDI版ジョブディスクリプション」を据え、「グレード」「専門領域」というキーワードを掲げています。社内の全業務を30の専門領域にグルーピングし、専門領域ごとにジョブディスクリプションと必要な専門スキルを定義しています。
また、能力開発を促進するために「評価制度」の見直しも行いました。グレード定義上の人財要件をもとに評価制度を刷新し、報酬へと連動させるなど、実力主義のメリハリのついた評価制度となっています。
スキルの発揮度を可視化する「能力評価」を導入
KDDI版ジョブ型人事制度では、評価は「①成果・挑戦評価」「能力評価(②コアスキル評価・③テクニカルスキル評価)」の3種類です。ここではKDDIの人財育成の起点にもなっている「能力評価」のうち、「コアスキル評価」をご紹介します。
KDDIにおける「コアスキル」とは、全社員が備えるべきコンピテンシーであり、ビジネススキルと人間力の要素を含んだものとなっています。論理的思考力や問題発見力、チームビルディングなどのスキルを、年に一度上司・同僚による360度評価によって、スキルごとに点数を可視化します。
KDDI版ジョブ型人事制度の導入により、社内の人財育成施策は転換期を迎えました。従来の研修を振り返ってみると、知識をインプットし、それをロールプレイやワークを通じて実務でどのように発揮していくかといったイメージをつかむところまでがゴールとなっているものが中心でした。しかし、KDDI版ジョブ型人事制度の下では、「実務でスキルを“発揮“できる」状態まで引き上げることが重要となるため、必然的に人財育成施策においても、1日や数日単位での研修に留まらず、数か月単位のもののほか、長いもので年単位の施策が徐々に増えてきました。
ジョブ型ベースでの人財育成のジレンマ
KDDI版ジョブ型人事制度の導入に伴い、スキルアップのための研修体系を新たに構築していきました。全社員がなりたい姿や深めたい専門性を見つけ、必要なスキルを自律的に学べる仕組みとして「KDDI DX University」を2020年から開講しています。当初はDXコア人財を育成するプログラムとして始まり、その後DX領域のみならず、30の専門領域ごとの研修に拡大しています。さらに、事業変化に対応できる基礎スキルを身につけるために、全社員共通のポータブルスキル研修も実施しています。
研修内容は実務での行動変容を意図して設定しているものの、個々人の状況でスキル発揮の阻害要因は異なるため、一人ひとりにいかにアジャストしていくかが非常に重要です。研修の場では発揮でできても現場では発揮できない人に対して、周囲の上司・メンバーの支援は欠かせません。特に課題となっていたのが、期待水準と現状の行動レベルにギャップがある人にどのような支援を行っていくかということです。全社員が身につけるべきコアスキルを引き上げていかなければ、専門スキルの発揮は難しくなってしまいます。そこで、ウィル・シードの協力を得ながら「コアスキル インテンシブコース」を立ち上げ、ビジネススキルの底上げを目指しました。
「コアスキル インテンシブコース」は3か月間という長期にわたる施策です。OFF-JTの集合研修を7回ほど行い、並行して実務の中でスキルを発揮するためにテーマを個々人で設定し、上司と共に進めていきます。
行動変容を促す仕掛けとして、支援者である上司向けの研修やサポートのほか、受講者向けのサポートも兼ね、受講者・上司ペアのメンター役としてウィル・シードによる実践支援を行っています。OFF-JTでのインプット、実務での実践、それに伴走するメンターとの1on1という、三位一体型のプログラムとなっています。2023年度に初めて実施し、30名が受講しました。今後も新たに受講者を募り、継続して行う予定です。
■スピーカー
木村健一氏(KDDI株式会社 人事本部 人財開発部 タレントマネジメント推進グループ グループリーダー)
教育サービス会社、企業向け人財育成サービス会社を経て、2020年にKDDI社に入社。KDDI版ジョブ型人事制度の導入に際し、DX人財育成・キャリア施策・階層別施策など、全社の人財育成施策全般に従事。「全社員がなりたい姿や深めたい専門性を見つけ、必要なスキルを自律的に学べる仕組みの構築」を目指して、KDDI DX Universityの拡大に取り組んでいる。