人材育成に役立つ情報がたくさんCOLUMN

すべての社員がグローバル人財【前編】

「グローバル人財」という言葉の意味合いが変化してきたように感じています。本セミナーでは「全ての社員がグローバル人財」を掲げて人財開発に取り組む第一生命の村上氏、中村氏、蔵口氏を招き、グローバル人財とは?グローバル人財育成とは?について議論しました。そのセミナーの一部を抜粋・編集してお届けします。(本稿では、同社に合わせて人財で統一)

「グローバル人財=英語」という固定観念からの脱却

第一生命グループは、2030年度に当社グループが目指 す姿として、「日本の保険業界の未来をリードする存在」に加え、「グローバルトッ プティアに伍する保険グループ」を掲げ、保険の枠組を超えて事業の幅を広げていこうとしています。そのために「全社員がグローバルに活躍するために必要なものとは何か?」を考える必要がありました。そして「英語を流暢に話せることがグローバル人財なのか?」「海外勤務の社員がグローバル人財なのか?」「一部の限定的な社員だけがグローバル人財になるのか?」から議論を始められました。

狭義のグローバル人財育成・広義のグローバル人財育成

辿り着いた結論は、グローバル人財を「狭義」と「広義」に分けて考えるということ。狭義のグローバル人財とは、海外保険事業領域で収益を上げるために必要な社員。海外保険事業領域でも通用する専門知識やビジネス英語の実践力を持った社員です。

一方、広義のグローバル人財とは、グローバルマインドと今の担当業務領域で通用する多様な経験やスキルを持った社員。グローバルマインドは、相手(お客さま・社員)のために、自分(会社)ができることを多角的な視野で考え、多様性を理解した行動で培われると定義され、全ての社員に対してグローバルマインド醸成が期待されています。

第一生命グループの掲げる人財戦略には「多様な人財が可能性を最大限に発揮し、挑戦と変革を実現する」というキーメッセージがあります。グローバル人財を狭義と広義に分けたのは、今まで狭義で意図していた海外保険事業領域で活躍する社員だけではなく、全ての社員がグローバルマインドを持たないと「社員の多様性」を「会社の変革につなげる力」に変えることができないと考えたからです。このようにグローバル人財を広義と狭義に捉えなおして、人事施策を企画・運用しています。

「本当に、全員にグローバルが必要なのですか?」

-2030年までに海外比率を50%にするという野心的な方針があるものの、現段階では圧倒的に国内事業の方が強い状況では、社内の逆風や抵抗もあるのではないでしょうか。「グローバル人財育成と言えば一部の人のためのものだろう」という認識がある中、この「すべての社員がグローバルに必要」を社内に浸透させていくためにどのような工夫をしていますか。

正直なところ、人事部内でも意見は分かれています。やはりグローバル人財=英語という発想があるため、上位者も含めて「本当に全員に必要なのか?」という声もあります。また人事部の中でも「グローバル人財育成と言えば一部の社員のためにやるものだ」という風潮が残っていることも課題です。

そこでまずは人事部の中で同志を増やし、広げていく取り組みをしました。海外事業に興味がある、グローバルに抵抗がないという人を見つけて、ディスカッションをすると「グローバルは英語だけじゃないよね?」という結論にたどり着きます。その後、グローバル人財施策としての露出を社内で増やして全社員に認識してもらう。興味のある社員はグローバル系の研修に参加するようにもなります。

研修は公募型にしています。会社が選抜するのではなく、社員自らが必要として参加する研修だというメッセージが伝わります。そして、研修に参加した社員の活躍を同僚や上司へお披露目しながら、「グローバル研修=単なる英語研修だけではない」という考えも広げていきました。

また経営層がグローバル人財育成の必要性を理解し、強く支援してくれることも大きいです。2030年までに目指す姿として「多様な人財の活躍」を強く社内に打ち出されているので、この経営方針に沿ってグローバル研修をその一つとして位置づけるようにもしています。

WANTの強い人に焦点を当てる

以前は選抜形式にしていて、TOEICのスコアなど一定の研修でパフォーマンスが発揮できそうな人を意図的に選んでいました。ところが、「なぜ私、ここに呼ばれたのでしょうか」といった期待とは違ったアンケートも多くあったそうです。そうであれば、WANTの強い人の方が伸びるし、将来海外に行ってもらえる可能性が高いのではないかと考え、海外へ行きたい人をまず行かせるという手挙げ形式に変えました。

意外と総合職ではない人たちから「行ってみたいです」と手を挙げてくれることもあり、総合職に限らず、グローバルに活躍したい、グローバルで競争力のある人財としてパフォーマンスを発揮したいという人が多くいることがわかりました。研修対象者を選抜型から公募型へ変更したことも工夫したことの一つです。

DX人財育成も、グローバル人財育成

-「グローバル=英語だけではない」ことへの理解を広げていくために、広義のグローバル人財育成としてどのような取り組みをされているのでしょうか。

マインド浸透のために参加しやすい公募型の施策があります。例えば「グローバルマインド醸成」は日本語で誰でも参加できるプログラムです。また海外グループ会社のCEOクラスが、自身のキャリアや、仕事への想い、事業展望を講演するプログラムは、毎年英語・日本語の双方で開催され、英語が得意でない人も気軽に参加できます。これらは公募で実施していますが、次の課題は、公募に手を挙げない人向けの取り組みです。

実は「グローバル=英語だけでない」という前提に立つと、DX人財育成プログラムすらも視野に入ってきます。DXの思想やDXそのものが「多様な価値観」や「多角的な視野」を重要視するフレームワークを多く持つため、直接的にではありませんが「グローバル人財育成」に寄与していると考えています。

第一生命のDXとは、既存の日本の保険ビジネスをデジタルの力で変革していくということ。例えば、営業一人ひとりにAIのデジタルバディをつけてコンサルティング能力を上げることや、既存の営業職員だけに頼らないビジネスのタッチポイントを作ることなど、百年以上続いたビジネスモデルを変革していく取り組みです。

生命保険の営業のやり方等も段々と時代とあわなくなってきています。お客様ニーズに応えるためには、本社がいろいろ考えて営業方針を打ち出して、これでやっていきなさいというやり方では通用しません。課題は現場にあるので、自分たちが現場で課題を解決していくやり方に塗り替えていかないといけません。

この既存の保険の枠組みにとらわれず現場で考え動いていくマインドは、見知らぬ土地、未開の地、そして海外で推進するビジネスに共通するエッセンスですし、これこそが=DXであり、=グローバルであり、=多様化ということだと捉えています。

(以上、講演の一部を編集して掲載)


パネルディスカッションご協力
第一生命保険株式会社 人事部 人財開発室
マネジャー 村上 誠稔 氏
アシスタントマネジャー 蔵口 美樹 氏

第一生命ホールディングス株式会社 
人事ユニット 人事グループ
マネジャー 中村 光佑 氏

※役職はセミナー登壇当時

RECENT POSTS

RECOMMEND

TAG LIST

INDEX

FOLLOW US最新情報をfacebookで!

株式会社ウィル・シード

〒150-0013

東京都渋谷区恵比寿1-3-1
朝日生命恵比寿ビル9・11階

03-6408-0801 (代表)