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- 2024.12.20
- グローバル
すべての社員がグローバル人財【後編】
「グローバル人財」という言葉の意味合いが変化してきたように感じています。本セミナーでは「全ての社員がグローバル人財」を掲げて人財開発に取り組む第一生命の村上氏、中村氏、蔵口氏を招き、グローバル人財とは?グローバル人財育成とは?について議論しました。
選抜型から「熱量だけで測る」公募型へ
-公募型の施策にすると、手が挙がらないという声も多くあります。第一生命では、どの程度、社員からの応募があるのか、また公募数を増すためにどのような工夫をしているのでしょうか。
グローバルタレントシーズというプログラムは、昨年まで入社3年目の総合職を対象に、英語スコア・英語のアセスメントを実施して上位者の中から選抜で海外派遣をしていました。しかし今年から、入社1年目から5年目まで対象を広げ、総合職に限らない熱意重視の公募制にしました。その結果、海外派遣枠16名に対して52名の応募があり、やる気と熱量だけで選考しました。
工夫はいくつかあります。採用活動時から、グローバル人財育成やグローバルタレントシーズを含めたプログラムについて話をし、入社前から興味を持ってもらいます。その後の新入社員研修でも、これから続く若手育成施策として伝えてきました。
また、研修公募は社内通達で発信していますが、社内通達を見ていないこともあるため、ニーズのありそうな部門には個別に発信し、所属長経由での声かけもお願いしました。これまでの地道な草の根活動の延長に、公募型でも手が挙がるようになったと考えています。
武者修行としての現地企業インターン
-海外に自社拠点があるのであれば、費用面や業務の親和性という視点で、自社拠点に派遣すればよいのではないかとも感じます。なぜ、敢えて社外のサービスを活用して、自社以外の現地企業で就業体験をさせるのでしょうか。
自社拠点に派遣するプログラムもあります。当社には海外にグループ会社がありますので、4年目以上の社員を対象に1週間の短期OJTトレーニングを実施しています。この研修はどちらかというと、狭義のグローバル人財としての海外キャリアを考えている社員が、実際に手を挙げて海外ビジネスの現場を見て学ぶための取り組みです。
しかし自社拠点での短期OJTでは、どうしても甘えが出てしまう。若手社員向けの海外派遣施策には、武者修行の意味合いもあると考えています。現地企業でのインターン「やるしかない環境」での経験です。自分が現地の社長の右腕となって動くしかない、英語を使うしかない環境で、ビジネス成果を出すことが求められます。どれだけもがき苦しんで掴むかが重要。この経験が本人を強くしますし、これは社外にお願いしないとできないとも考えています。
実際に派遣された若手社員に、研修参加前後で、自分自身の行動・マインドの変化や、現在も引き続き変化し続けていると感じることについて、ヒアリングした声を紹介します。
- 業務において今までチームや上司に判断を任せていたところを少しずつ自分の判断でやるように心がけて動いています。
- 前提を疑う姿勢を持つようになり、これまで慣習的に行われていたことが正しいことか、過去の環境下では良かったものが、今の環境下では意味が変わっていないかなどを考えるようになった。
- 未経験業務への挑戦に対する抵抗がなくなった。
- 英語を利用する際の抵抗感が薄れた。
修羅場体験ですから、自分で考えること、前例踏襲を疑うこと、周囲を巻き込むこと、主体的に行動することで派遣者の変化があったと思います。どちらかというと、英語力向上といったコメントよりも自分のマインドや行動が変わったというコメントが多いのも特徴です。
今後、現場で自分たちが考えてやっていかなければならないという環境に置かれた時、「今やっていることが本当に正しいのか」「どんどんと環境が変わる中でどうすべきか」を考えることが求められます。同じことがこの修羅場体験のアンケート結果にも表れていると感じています。
特定テーマから、基盤テーマへ
従来の「グローバル人財育成」という言葉から想起されるような英語力向上や異文化理解、海外赴任者のプール育成など、もちろんいずれも重要です。しかし、さらに踏み込んで「グローバル化とは、私たちの会社にとって何を意味するのだろうか?」「グローバル人財とは、何ができることを意味するのだろうか?」について、幅広く考える時期を迎えていると感じています。
グローバル人財育成についても、狭義の海外駐在員を育てるテーマから、より広義のグローバル人財、つまりグローバル経済圏で成果を出していける人を育てるというテーマへと変わってきたのではないでしょうか。
(以上、講演の一部を編集して掲載)
パネルディスカッションご協力
第一生命保険株式会社 人事部 人財開発室
マネジャー 村上 誠稔 氏
アシスタントマネジャー 蔵口 美樹 氏
第一生命ホールディングス株式会社
人事ユニット 人事グループ
マネジャー 中村 光佑 氏
※役職はセミナー登壇当時