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トレーニーに身につけてほしい「海外ビジネス対応力」の曖昧さ

人事ご担当者に「トレーニーに何を身につけてほしいですか?」と伺うと、「将来、海外ビジネスに対応できる力」と返ってきます。では、この「海外ビジネス対応力」とは一体何なのでしょうか

「海外ビジネスに対応できるようになる」ことを目標に派遣された、ある製造メーカーのトレーニー Aさん。中国の大学で中国語を1年間勉強した後、中国の物流拠点のトレーニーとして9ヶ月OJTを経験しました。帰国後、現地での状況を聞いたところ、以下のような回答が返ってきました。

「日本で担当していた生産管理の業務とは全く異なり、現地では経理財務部門で仕事をしていました。わからないことばかりなので、最初の3ヶ月は結構勉強したり、同じ部署の人に仕事を聞いたりと、キャッチアップすることに必死でした。中国の人って、仕事を教えたら仕事を奪われると思っているのか、全然教えてくれないんです。」

「しかし徐々に仲良くなると、少しずつ教えてもらえるようになって、みんなの仕事を手伝えるようになりました。半年経った頃には、現場見学にも連れて行ってもらえ、そもそも日本とは人員構成が違うからやり方が違うんだな、と実感しました。最後は日本で経験した生産管理の観点から物流管理にアドバイスできることをまとめて伝え、現地からも『役に立ちそう』と感謝されました。」

「理解できた」に潜む落とし穴

もう1人、インドネシアに派遣されて5ヶ月目のBさんの事例を紹介します。Aさん同様、開始から2ヶ月間はインドネシア語の習得に時間を使いましたが、3ヶ月目から営業企画という役割で現地の業務に就きました。

まずは現地組織の理解を進めるところから始めようと、現地スタッフに営業のやり方を聞いたり彼らの営業に同行したりしていました。その後の月次面談で、Bさんから以下のような発言がありました。

「営業同行しているうちに、『これじゃ売れないな』と思う点がいくつも見えてきたんです。全部は無理ですが少しずつ改善はできると思ったので、上司からOKをもらって改善活動をはじめました。」

「より深く現地を理解するために『1つの拠点に着目して現場の営業数名とマネジャーに話を聞かせてもらいたい』と会議の場で話したところ、全会一致でOKが出ました。しかし、いざ話を聞きに行くと、全然話してくれないんです。それどころか、本社からのスパイじゃないかと疑われ、『本当はお前、何をしにきたんだ?』と責められる始末・・・。本当に困りましたね。」

「まずは目的をちゃんと理解してもらおうと思い、一人ひとり個別に話をして僕の目的を伝え、さらには今の仕事で不満に思っていることやなぜ続けているのかなど話していくうちに、みんなが情報を出してくれるようになって。今では、一番意欲の高い営業担当と試行錯誤しながら、この拠点におけるよりよい方法を模索しています。」

AさんとBさんは、業界・派遣先・役割・期間など、さまざまな条件が異なるため、単純な比較はできません。しかしながら、見聞きして「理解した」だけのAさんと、「理解した」違いを試行錯誤しながら「乗り越えた」Bさんの身につけた「海外ビジネス対応力」には大きな差が生じているのではないでしょうか。

行動に落とし込める目標の重要性

この違いは、時間(派遣期間)を長くすれば解決するというものではありません。また、現地での業務アサインも重要な要素の一つですが、日本から現地での業務内容やそのアサイン方法に介入できない、というケースも少なくありません。

私たちがトレーニーを支援していく中で、重要視している要素の一つは「トレーニーに現地で取り組むべきアクションを具体的にイメージさせること」です。

「海外ビジネス対応力」と一口に言っても、聞いた人によって捉え方は大きく異なります。将来、海外ビジネスでどのような人を巻き込んで、どのような仕事を進めていく必要があるのか。また、そのときにどのような知識やスキル、語学力を身につけておく必要があるのか、といった具体的イメージを持ち、その予行演習となるような経験を積ませるための支援、これこそがトレーニーに必要なサポートなのではないでしょうか?

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