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スタッフ日記 ~私の自由研究~

都立高校生を対象とした起業家教育プログラム『起業・創業ラボ』が実施されました。
関わったウィル・シードスタッフが得た『学びや気づき』をスタッフ日記としてご紹介します。

『起業創業ラボ』とは、起業・創業学習を通して起業・創業への関心を高め、都立高校生等の起業家精神を醸成するとともに、新しい価値を創り出す力を育成するための取り組みです。取り組みに共感し手を挙げたウィル・シードスタッフが、高校生のメンターとしてグループワークに参画し一夏を共にしました。
活動の詳細は、【東京都の教育内容ページ】に随時掲載される予定です。

今回の日記執筆は、研修設計を担当している市川賢二。

 

私の自由研究

「夏休みの自由研究」というと苦い思い出がよみがえる。

というのも私自身、自由研究を楽しくできた記憶があまりないからだ。幼いながらも“自由”というのは名ばかりで、あまり自由過ぎても先生に怒られそうだし、同級生はどのようなものを作るのだろうと周囲の目を気にしたり、どこまで自由なのかをついつい測ろうとしてしまい、結局自由でないならば、なるべく手を抜いてできないかなと考えていた気がする。そのため、自由研究に対して、勝手に息苦しさを感じていたように思える。「自由はなかなか手ごわい」という印象を持っていた。

その自由に対する何とも言えぬ歯がゆさはどうやら今の高校生も同じく感じているようであった。自由という言葉は好きだが、自由と向き合った瞬間にどう扱って良いのかわからず、自由に対してえも言われぬ気持ちを持っているような気がした。

そんな自由と真っ向勝負させたのが、今回高校生向けに実施した「起業・創業ラボ」だ。起業・創業ラボは、アイデアの出し方について体感してもらい、最終的に起業のアイデアを自由に考えビジネスプランとしてまとめてもらう場である。今回、私は起業・創業ラボの1つのチームのメンターとして参加したのだが、どうやらこの正解のない自由こそが曲者らしく、高校生だけでなくサポートする周囲の大人たちもなかなか苦しめていたように思えた。

自由には惹かれる一方でその効果・効用には、十分に気をつけたほうが良いと思われたので、今回の起業・創業ラボを通して、自由とどのように付き合っていけば良いかを考察していきたいと思う。

ケース1:「手段が自由」の場合の考察

起業・創業ラボの最初のアクティビティでは、ユーザーの抱えている悩み・課題を見つけ出し、それに対してどのような解決策があるかを考察した。小難しく言うとそういうことだが、実施したことは、クロワッサンを食べる姿を観察し「食べている人の悩み」を解決する策を考える、それだけだ。悩みを解決するための手段は自由だ。

高校生は、食べている人の悩みを解決する手段について、実に自由にアイデアを出していた。それを見ていた私は戸惑ってしまった。というのも、私が担当していたチームは他のチームとは全く別のアプローチを取っていたからだ。

このお題を出された時にクロワッサンをこぼさずに食べることをサポートする仕組みを私自身は考えていたが、私のチームは「クロワッサン自体を小さく作ればいい」という発想であった。手段は自由なので、全く問題ない発想なのだが、私がそのアプローチでも問題ないかをついファシリテーターに確認してしまったぐらいだ。

このアクティビティでの特徴を整理すると「目的は定義されていて、手段は自由」というものであった。彼らはこのようなアクティビティに慣れていないという戸惑いこそあれど、思考が停滞してしまったり、アウトプットがでないということにはならなかった。手段の自由さは彼らを楽しませた。

ここでの発見は、目的を定義し、手段を自由にした場合、解決策を構築するプロセスに特徴がでるということだ。感覚的に作る人、論理的に考える人、現実的に考える人、人の意見を尊重する人など、その人なりの思考特性、行動特性が良くも悪くも浮き彫りになると感じた。

ケース2:「目的が自由」の場合の考察

次のアクティビティでは「これから訪れる未来ではどのような新しい考え方や技術が生まれるか」を自由に考察した。クロワッサンのアクティビティのように「~の悩みを解決する」といった目的は明確に定義されておらず、手段の枠組みがある程度定義されているのみであった。

このワークについては悩む人が多く、「これでいいのか」という確認する質問が多かった。最終的にはちゃんとアウトプットすることができていたが、楽しみながらアウトプットした人、難しいと感じながらアウトプットした人などさまざまであった。そのプロセスの違いは「目的を自分なりに定義できたかどうか」だと思われた。

目的から自由になった時に人は戸惑うが、ひとたびそれを定義できると一気に思考が進む。今回で言うと、自分がワクワクするための未来を描くか、今後起きうる社会問題を解決するための未来を描くかなどの目的を自分なりに定義できたか、がポイントだ。

このように目的を自由にし、手段はある程度の枠組みで規定した場合、最初の挙動として目的を確認する人が多いものの、目的を自分で定義して良いとわかったときに、その人の価値観が表出するように思われた。

ケース3:「目的・手段が自由」の場合の考察

① 価値観をすり合わせる

そして起業・創業ラボの集大成であるアクティビティでは、目的も手段も自由であった。「訪日外国人向けのビジネスプランを考える」というテーマは与えられているが、何のために何をどのように解決するかは自由に考えて良い。やはり、ここでは「何のために」を創出するのが最大の難関であった。

外国人の方へのインタビューなどを通して悩みは浮き彫りになるのだが、何の悩みを解決していくかを集約するのが難しい。まさにこのアクティビティの目的をどこに定めるかなのだが、このすり合わせが非常に難解である。なぜならば価値観のすり合わせになるからだ。悩みを持っている人たちがいたときに、食にフォーカスするのか、旅先でのすべての悩みにフォーカスするのか、それを考える時に各自の価値観が露出する。

この事象から推察するに、目的・手段から自由になった時、かつそれをグループで進めるとなった時、目的のすり合わせは価値観のすり合わせになる。その価値観のすり合わせでは、あらゆる観点で議論することがポイントだ。夢を語っても良ければ、現実的な話をしても良い、具体的な手段で話しても良い。

至極当然なことになってしまうのだが、人は自由を渡された時に、自由を渡された領域の中で自分の領域を持てるか、つまり自分なりの解を定義していけるかがポイントになると感じた。その定義には自分の価値観が含まれていて良いし、むしろ価値観が含まれるからこそ、その後の活動の原動力になると感じた。

まずは自分自身が納得できているかが重要だ。その上で、協働者と領域をすり合わせていく。協働者にもそれぞれの領域があるからだ。自分だけでなく協働者も乗っていける領域を定義できるかがその後の活動を左右する。そして、新たに協働者とすり合わせた目的の領域の中で、手段を考える。
 

② 目的を捉え直す

私のチームでは解決すべき悩みに対して意見が真っ二つに分かれたが、具体的な解決策のイメージや今後の展望などさまざまな観点で思う存分に議論した上で、意見を一つに集約することができた。その後の活動は、目的が明確になった分、非常に明快な行動が増え、一つひとつの行動の質も高まっていた。

このまま最後まで走り抜けられると思ったのだが、最終的なアウトプットを作り出すときにかなりの停滞感が生まれた。その停滞感は目的から離れ手段を細部まで詰めて行った時に、当初描いた目的と合致しているかがわからなくなり生まれたものだと感じた。この行き詰った時に、これまでの議論のプロセスを振り返ってみるようアドバイスをしたところ、チーム内で目的の捉え直しが発生し、より目的が具体化された。その結果、それまでの停滞感が嘘であったかのように議論が進んでいった。

このように各々の価値観を表出した上で、すり合わせすることができれば、その後の議論は捗る。ただ目的を設定した後にポイントになるのが、何度も目的に立ち返ることだ。目的・手段が何も定義されていない場合、立ち止まっていては何も進まないため、走りながら定義していくことが求められる。目的をとりあえず設定した後に手段を考え、手段を考えていくうちに、目的がより鮮明に見えてくる。

だが、ついつい目的を置いてきぼりにして、手段を詰めに行ってしまう。こうなるとどんどん議論が詰まっていく。手段と目的が離れていくと、自分達が何をしたかったのかがわからなくなっていく。走りながら定義することは大事なのだが、走りっぱなしもダメで、走った後には立ち止まって考えてみることも大事になる。

一度目的に立ち返り、捉え直しをすると目的がより自分達らしいものとなって生まれ変わる。それをもとに手段を考える。その繰り返しをすることで、何もなかった目的・手段が洗練されていく。

目的を捉え直し、領域をはっきりさせていくと、目的と手段のつながりが明確になる。このようなプロセスを通すことで、アウトプットに奥行きと彩りが生まれ、多くの人を惹きつけるものに生まれ変わる。

自由との付き合い方 

 「自由はなかなか手ごわい」

これは自由に対して受け身になっているがゆえに生まれた感情だ。自由は放置しておくと何も生み出さないし、まして多くの人と関わりながら進めるときは価値観がせめぎ合い、自由の領域がどんどん狭まり息苦しさを感じる。

自由と付き合っていくためには「自由の中に自ら飛び込み、自分の領域を作っていくこと」が大事だ。最初は自由の扱い方がわからなくても思いのまま動いてみれば良い。動き続ければ、積み上げた行動の中に輪郭が生まれ、それが自分の領域になり、やがて自分らしさになってくる。

夏休みの自由研究では、苦い思い出を作ってしまったが、同級生に「面白い!」と言わせるとか、誰も作ったことのないものを作ってみるといった、自分から自由に歩み寄り、自分なりに目的・手段を定義して取り組んでいれば幾分良い思い出になったのではと今更になって感じる。

自由の苦みは大人になっても苦いままだ。大人になったからといって、自由とうまく付き合えるわけではない。自由の苦みを旨みに変え、良い思い出を作っていくためには、自分から動いていくしかないのだ。

と、つらつらと好き勝手に書いてきたが、当初これは自由研究を苦しんだ昔の自分へのアドバイスとして書いていた。ただ書いていくうちにこれは昔の自分へのメッセージではなく、今の自分に向けたメッセージであることに気づいた。

そんな、とある夏の私の自由研究。

【起業創業ラボ 集中型メニュー】
オリエンテーション
DAY1:未来に起こることを想像する
DAY2:現在のビジネス・業界情報を調べる
DAY3:インタビュー/リサーチをする
DAY4:ビジネスチャンスを発見する
最終発表会

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