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- 2019.11.01
- 学校教育
スタッフ日記|メンターのスタンス
都立高校生を対象とした起業家教育プログラム『起業・創業ラボ』が実施されました。
関わったウィル・シードスタッフが得た『学びや気づき』をスタッフ日記としてご紹介します。
『起業創業ラボ』とは、起業・創業学習を通して起業・創業への関心を高め、都立高校生等の起業家精神を醸成するとともに、新しい価値を創り出す力を育成するための取り組みです。取り組みに共感し手を挙げたウィル・シードスタッフが、高校生のメンターとしてグループワークに参画し一夏を共にしました。
活動の詳細は、【東京都の教育内容ページ】に随時掲載される予定です。
今回の日記執筆は、営業職の中島ブライアン虹敏。
メンターのスタンス
今回私が担当した「メンター」に事前に伝えられていた主な役割は以下の4つであった。
- 理解促進(説明内容の理解を促す)
- 遂行支援(時間内に必要なワークができるように活動を整える)
- チームビルディング支援(チームとして活動できるよう後押しする)
- アウトプット支援(成果を出したい気持ちを引き出す)
「促す」「整える」「後押しする」「引き出す」といった言葉から読み取れるように、メンターの役割はあくまでも学生の学びの促進・支援であったが、学生のためにできる限りのことをしてあげたい気持ちが強かった私は、プログラム当初からどこか「教えてあげる」といった意識・スタンスを持って学生と接していた。
例えば、それぞれ異なる高校から参加したチームメンバーとの初対面の場となったプログラム初日には、緊張や気恥ずかしさからか自ら自己紹介や会話をしようとしない学生に対して「まだこういう状況に慣れていないのであろう」という思いから、私から冗談を交えながら部活や夏休みといった、学校が違っても共通項が見いだせそうなトピックを問いかけてみたり、学生を順番に指名して発言を促すなどして積極的に先導し、その場を成立させていった。この時の私はまだ、自分が間違いを犯していることに気がついていなかった。
チーム・ブライアン
プログラム2日目、チームの個性・一体感を持たせるために、学生にはチームに名前を付けるタスクが出ていた。その際に出た一案が私の名前が入った「チーム・ブライアン」であった。正直、この案が出た時は学生のみんなが慕ってくれていることに喜びを感じたが、その後この喜びは大きな反省に変わった。
プログラム2日目の終了後、チームや各学生の状態について講師や他の運営メンバーに問われ、この「チーム・ブライアン」について共有した際に「でも、これはブライアンのためのプログラムじゃないからね」というフィードバックを受け、我に返った。これまでの本プログラムにおける自身のアクション・思考のベクトルが全て自分に向いていたことに気がついた。私の問いかけや投げかけで初対面時の居心地の悪い沈黙を回避し、時間内にワークを終わらせることは確かにできたが、これは学生がみな真面目で参加意欲も高く、問われたことに対して全力で「答えて」くれたに過ぎなかった。言葉を返すと私は学生が「前提の異なる人との初対面」や「制限時間内でのチームワーク」という状況を自分自身で「どうにかする」チャンスを奪っていただけであった。
手放す・委ねる
前述の気づきを受けて反省している私に向けられた励ましは「学生のポテンシャルを信じて、委ねてみようよ」であった。時間内に各ワークを終わらせないといけないプレッシャーと、学生は本当に自走できるのかという不安に駆られながら、プログラム3日目からチーム内のコミュニケーションやワークの進め方など、ほぼ全てのことを学生に委ねてみた。
ここでマジックが起きた。はじめはこれまで仕切っていた私がいなくなり、沈黙が続いたり、私が何か言いだすことを待っている時間が若干あったが、その後、チームは2人のメンバーを中心に議論が動き始めただけでなく、これまで私が特に手厚くフォローしていた最年少のメンバーのフォローの役目もごく自然に上級生が担うようになっていった。
この時私はこのプロジェクトは「知識」を教える場所ではなく、学生らが「自分で学ぶ」場所であることを初めて本質的に理解した。その後私は「教える」ことを手放し、いきさつをチームに「委ねる」スタンスでチームをサポートし続けた。例えば、それぞれの学生の特性や状態に考慮しながら、成長の機会を作り出せるよう意識して「なぜそう思ったのか」「他の観点はあるか」「別の立場だったらどう思うか」など、より議論が活性化するようなファシリテーションに徹した。ここまでやると、あとは学生がおのずと互いに刺激し合い、発見し、フィードバックし合っていた。プログラム終盤には、タスクの細分化や連携がかなり求められるワークにおいても、自分達で役割分担を行い進められる状態になっていった。振り返ってみると、学生は多くの学びを得ていたが、私が「教えた」ことは何一つとしてなかった。
最後に
教職員の負担軽減および時代に合った教育を時代に合った方法で学生に届けるという観点で、教育現場の自動化やデジタライゼーションは今後急激に進むと思われる。簡易的な試験や宿題の答え合わせの自動化や、ミーティングツールを活用した遠隔授業の実施など、行える効率化はどんどん進めばいい。
ただ、今回私達メンターが行ったような、データでは表しきれない学生の特性や状態に合わせて成長を促す支援は“人”だからできることであり、人工知能などには絶対に取って変わられない「人ならではの価値の出しどころ」だと思う。
今回このプロジェクトを通して「委ねる」ことで生まれる学びに気づけたことに感謝し、一社でも多くの企業に自分自身およびウィル・シードならではの価値を届けることができるよう努めようと強く思った。
【起業創業ラボ 集中型メニュー】
オリエンテーション
DAY1:未来に起こることを想像する
DAY2:現在のビジネス・業界情報を調べる
DAY3:インタビュー/リサーチをする
DAY4:ビジネスチャンスを発見する
最終発表会