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- 2022.06.12
- キャリア
テーマはキャリア自律。仕事に自分なりの色を出していくこと
2022年、ウィル・シードに発足したチーム、X-Border Fantasy(クロスボーダー・ファンタジー)。越境学習体験を通じて、参加者自身の志を掘り起こす機会を提供しています。X-Border Fantasyが提供するプログラムの一つ、「SHIFT」についてご紹介します。
X-Border Fantasyが贈る若手・中堅向けプログラム”SHIFT”。テーマはキャリア自律、「仕事に自分なりの色を出していくこと」を目指したプログラムです。
社員の自律的キャリア形成を支援したい企業は増えていますが、自社限定の施策では限界を感じてしまっていることもあるのではないでしょうか。真の自律を促すならば、会社の外に出て新しい価値観と出会うことで、大きく考え方をアップデートできることでしょう。
“SHIFT”では、異業種メンバーとの対話やワークを重ねて自己を客観視し、自社や自分の思いを捉え直したうえで、自分にできること、やりたいことを見出していきます。〈個〉の志を明確にし、仕事を通じて社会に価値を提供していける「手ごたえ」をつかんでもらいたいと思っています。
”SHIFT”について、X-Border Fantasyの発起人である岸本 渉、中川孝晃、小林陶哉が、それぞれの思いを語ります。
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仕事を通じて社会に価値を提供していくために、志を磨く
シフトチェンジで仕事にやりがいや手ごたえを
岸本:“SHIFT”が目指すところとしては、”GIFT”同様、参加者自身が社会における〈市民感覚〉が得られたらということがまず1つ。それから、自分が持っている企業のリソースを客観的に捉え、それを社会に還元できるよう活用するには、どうすればよいかを考えられるきっかけになればと考えています。
「自分の仕事で社会課題を解決する」と言うと一気にハードルが高まるように思えますが、自分の目の前にある仕事を通じて社会に視野を広げ、「自分は世の中に何をしていきたいのか」「どのような価値貢献をしていきたいのか」など、自分の中で志をはぐくめるようなアプローチをとっています。
もう1つの“SHIFT”のテーマとして、キャリア自律があります。〈個〉の志を尊重しつつ、企業としては自社に価値を提供してくれる人を望んでいます。どこか矛盾してしまっていますよね。それは事実としてあるものの、本人がやりたいことを突き詰める、そして組織にとってはその事がこれまでにない創造的価値につながるような、どちらのロジックもとれるようにしたいと思っています。
会社起点ではなく、自分起点で仕事ができるようになる。仕事に自分を合わせるのでなく、自分に仕事を合わせられるようになる。”SHIFT”では、日常の中でシフトチェンジしていけるような、そうした機会を提供したいと思っています。
今、求められているキャリア研修を考える
岸本:キャリア自律については、個人が自分でキャリアを築いていくことを会社がサポートする流れは強まっています。例えば、ジョブ型・副業解禁など、大元の人事制度の整えや、FAによる異動、今の自分に必要な学習内容を自由に選択できる公募型研修ラインナップの拡充と言った人材開発面でのサポートなどです。ただ、ハード面のサポートは充実しているのですが、参加者の心の内側がそれについてきていないようにも見受けられます。どこか受け身になってしまうというか。
小林:会社が本気で創造的な価値を生みたいと思っていて、そのためにも個人がやりたいことをサポートしていきたいのなら、どうするべきか。「本当はこういうことをやりたい」という、一人ひとりの思いを掘り起こしたり、自分の問題意識につながっていくような体験をつくり出すことが欠かせないと思っています。
中川:会社として「自律的にキャリアを積んでください」と言いながらも、用意できるのは社内にすでに在るポストだけになってしまう。本人の意志と、会社が提供できる環境を考えたときに応えられないこともある。それは明言せずとも、どうしても暗にそうなってしまう。
そのことに問題意識や心苦しさを抱いていらっしゃる人事担当者の方がいました。従来型のスキルアップのための研修ではなく、“SHIFT”のような〈個〉を見つめ直す研修の機会を会社が提供することは、会社が社員の思いや志を大切にしているということが参加者に伝わるのではないかと、大いに期待されているようです。
キャリア研修をwill-can-must的に整理することも大切ではあるのですが、では、参加者が今後、それらを基にいかに自分でキャリアを切り拓いていていくかについては、これまでは本人任せだったように思います。“SHIFT”では、キャリアの切り拓き方やアクションを起こすためのヒントも提供できるものにしていきたいと思っています。
自分の武器は、なんだろう? 次代を担う若手・中堅こそ、改めて客観視を
岸本:そのために”SHIFT”では、いくつかの仕掛けをつくっています。まず、自分の仕事を客観視したり、今の自分が持っているスキルや武器にはどのようなものがあるのか、結果的に内省できる学習デザインにしています。会社だけにいると、自社の価値観が当たり前だと思ってしまい、自分がやっていることに違和感を抱かなかったり、やりたいことを見つけようにも比較対象が社内だけになってしまったりします。そこで、異業種メンバーと対話を通じ、〈個〉としての自分の捉え直しを誘発します。いわば、「プチ越境学習」ですね。
中川:キャリア自律のためのプログラムを会社の中だけでやろうとすると、どうしても矛盾が生じることがあります。〈個〉が主体的にキャリアに向き合っていくべきなのに、そのためのヒントを自社の中だけで探すことになり、結局は「この会社でできることは、なんだろう?」という話になってしまう。
“SHIFT”のように、自分・会社・社会を含めたキャリアについて異業種メンバーと考え、深めることで、自分が培ってきたこと、やりたいことを客観視できて、そのうえで自社に活かせることはないだろうかと考えられるようになるはずです。
小林:組織適応期を乗り越えた若手・中堅ともなると、ある程度の専門性も身についてきます。でも、それが本当に自分の専門になっているのか自信が持てなかったり、今まで培ってきたスキルにばかり気が向いてしまいがちです。そうではなくて、これまでの自分の考え方や志も含めてその人の専門性であると我々は捉えています。
異業種の人と関わってみることで、自分の専門性や改めて自社の提供価値を自分なりに再解釈することができ「これをもっと活かしていきたい」と、自覚的になれるのではないでしょうか。
今いる会社では、やりたいことができない?若手のジレンマ
岸本:若手には、また違った悩みがあると思っています。
就職活動で自分のやりたいことをとことん考え抜き、「自分はこんなことをして社会に貢献したい」と、希望や想いを持って入社するわけです。しかし実際に働いてみると、仕事は細分化されているし、正直、面白いことばかりでもない。自分の問題意識を仕事の価値に変えていきたいと思ったとしても、「今の部署では無理だ、あの部署に配属してもらえればできるはずなのに」「転職してイチからやり直したほうがいいのだろうか」といったように考えてしまう人は、少なくないのではないでしょうか。
中川:望むキャリアがあるのなら、セルフバリューを磨いていくことが欠かせません。自分の価値を高めると共に、「周囲から自分はどのような人として見られたいのか」と自分でプロデュースしていくことができれば、組織に埋もれすぎず、やるべきことはやりながらもチャンスを得ていくような、考え方や動き方ができるようになることが理想的ですよね。
岸本:今はまだやりたいことが明確になっていなくとも、異業種メンバーと対話を重ねることで自己を相対化できますし、自分が価値発揮できる機会や領域はどこになるのか、それをしたたかに考える契機にもなります。
1on1が導入されている企業は増えていますが、「あなたは何をやりたいの? どんな仕事をしたいの?」といったように、〈will〉が大前提になっていることが往々にしてあると思うのです。人によっては〈will〉自体がはっきりしていないこともあるかもしれないのに。
〈will〉を掘り起こしていくこととあわせて、〈will〉の磨き方、試行錯誤の仕方を学ぶ。これもまた”SHIFT”が目指すところであります。
中川:〈will〉はそのまま、その人の〈色〉になると思うのです。自分の色を出していけたなら、仕事は楽しくなるはずですし、やりがいも感じられるようになるはず。我々は“SHIFT”を通じて、参加者が自分らしく仕事をしていくためのサポートをできればと思っています。
“SHIFT”の概要
“SHIFT”は、“セルフ・プロデュース”というコンセプトで、若手・中堅(ある程度、任された仕事は出来るようになる20代後半~30代半ば)のキャリア自律を支援するプログラムです。
若手・中堅対象:SHIFT“セルフ・プロデュース”
「組織や社会において、自分は将来、どのような存在として見られたいのか?」を改めて捉え直し、そのためにできることや自分の可能性を探ります。インプットや対話だけではなく、参加した本人の現場でのアクション(実践)を前提とした学習体験を設計しています。アクションした中で得た葛藤や気づきを持ち寄り、異業種メンバーと考えを交換したり、改善策を練ったりと、密にコミュニケーションを取りながら学びを深めていきます。
そうすることで、仕事を会社軸(会社から与えられたMUST)から、自分軸(会社を通して社会に価値提供していきたい自分のWILL)に“SHIFT”していく支援を行えるもの、と考えています。
「個人のキャリアを推進すると、組織の利益が損なわれるのでは」?というキャリア自律におけるパラドックス(一種の矛盾)も受け入れつつ、「個人が企業と言う器を通し、どんな価値提供をしていきたいのか、そのためにどんな挑戦や探索が必要なのか」ということを体験・内省できることに重きを置いています。
期間は約1か月半程度(プレセッション、セッション2日間、インターバルワーク)。1回目のセッション後に設けている1カ月~1カ月半程度のインターバルワークの期間に実践。そこでのトライアンドエラーの結果を2回目のセッションでプレゼンテーションし、異業種メンバーと共にリフレクション。今後のプランづくりに役立てます。
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〈個〉の思いを交差させ、新たなビジネス、理想の社会を実現
「会社起点ではなく、自分起点の仕事実践」を目指す”SHIFT”。自分を起点に据えるとなると、独立や起業といったことを思い浮かべるかもしれません。今は「個人の時代」と言われていますし、働き方も多様化していますから、もちろんそれも一つの選択肢となり得ます。
その一方で、自分の〈個〉を見失わずに企業で働くことはできないものだろうかと思うのです。企業には、それまで培ってきたリソースやつながりがありますし、何よりも「人」がいます。それぞれの専門性や得意を発揮して〈個〉の力を結集させることで、〈個〉の想像をはるかに超える大きなインパクトを社会に与えることができるはずです。
“SHIFT”を通じて自分や自社を捉え直し、今の仕事をより良いものにしていく。今いる環境をフルに活用して新しい価値を生み出していく。そのための手がかりをつかんでもらえたらと思っています。
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X-Border Fantasy(クロスボーダー・ファンタジー)
岸本渉(きしもとしょう)
X-BorderFantasy室長。博報堂、ファーストリテイリングを経て、ウィル・シードに入社。コンサルタント・営業責任者を経て「越境で共創する、意志ある未来づくり」を志向する新プロジェクトX-Border Fantasyを立ち上げる。越境学習に可能性を見出し、様々な大企業リーダー変革の越境プロジェクトを企画・推進する傍ら、ファシリテーターとしても、組織で働き成果を出すこと、人が自分らしく自分の「本物」と繋がること、この両方を諦めない場づくりを追求している。
中川孝晃(なかがわたかあき)
X-BorderFantasyジェネレーター。楽天で新規営業、社長室にて秘書・経営企画業務、リサーチ部門でのBtoBのマーケティング支援等に加え、新卒2年目から育成を担当。部門の育成体系構築、英語公用語化プロジェクトなど一貫して人材育成にも携わりウィル・シードへ。X-Border Fantasyの原点となるPBL型越境サービスを顧客・パートナーと共同開発。その後も次々と前例に無い企画を共創パートナーと生み出し、ファシリテーターとしても場に立ち続ける。
小林 陶哉(こばやしとうや)
HRD事業部長。仏企業の日本進出コンサルティング業務に従事し、フランス投資ファンドと共同でヨーロッパ企画のエシカルコスメ商品を輸入販売するJV事業の立ち上げを代表として務めた後、ウィル・シードへ。オンライン教育事業やグローバル派遣事業、X-Border Fantasyの原点となる地域課題解決と連動した越境型プログラムなどの立ち上げ・開発に携わる。現在は国内事業の責任者。