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キャリアは、「考える」から「育てる」時代へ。

社員一人ひとりが主体的にキャリアを築く「キャリア自律」の必要性が高まる一方で、「何をしたいかがわからない」という若手社員が多いことも事実。若手社員のキャリア自律のヒントやキャリア研修の設計のポイントを探ります。

若手社員のキャリア自律を支援することを目指し、ウィル・シードが新リリースしたプログラム「セルフ・プロデュース」。振り返りによって今後のビジョンを描く従来型のキャリア研修とは異なり、“参加者自身の好奇心を起点に行動する”という経験を通じて、意志をはぐくみながらキャリアの可能性を広げていく新しいタイプのプログラムです。

このコラムでは、若手期にキャリア自律を実現する難しさやその背景にあるものについて解説。今の若手社員にとって本当に役立つキャリア開発のあるべき姿を手探りながら、「セルフ・プロデュース」についてもご紹介していきます。

これからのキャリアは「自分で育てていくもの」に。

時代が変われば、企業や働き方も変わる

従来の年功序列制度に基づくキャリア開発から、個々人が自分の強みを生かしながら、自らの責任でキャリアを選択するという、主体的なキャリア戦略を促す必要性が増しています。

その背景のひとつに、ヒット商品のライフサイクルの変化があります。1970年代以前、約6割の商品が5年以上のロングセラーとなっていましたが、2000年代に入ると、そうした商品はわずか5%ほど。さらには約半数の商品が2年未満で衰退するという調査結果もあります。

商品のライフサイクルが長ければ事業も長く続いていくわけですから、社員は長期的かつ固定的なキャリアパスを実現できました。かたや近年、事業そのものが短期で終わってしまう可能性も大いにありますし、変化やニーズを迅速に捉えながら商品のアップデートする必要があるため、企業側が安定したキャリアパスを提供することが難しくなっている。働く人自らが変化に適応し、キャリア形成に取り組む必要が出てきたのです。

こうした流れは企業のキャリア研修のあり方にも現れています。以前であればシニア層を対象に、退職後のライフプランを考えるといった内容のものが多かったのですが、今では主体的なキャリア形成の意識を早期から醸成させたいというニーズから、若手・中堅向けのものが増えつつあります。

若手社員向けのキャリア支援のハードル

ウィル・シードも若手社員の方のキャリア支援に携わらせていただく機会が多くありますが、若手期特有の難しさを感じてきました。それを紐解いていくと、4つの側面が立ち現れます。

  1. ビジネス環境の変化|今や変化が当たり前の時代、自社の事業が10年後も継続しているとは言い切れません。そのため、「この会社で、自分はどうなりたいか」を考えることすら難しくなっています。
  2. 新卒一括採用という前提|新卒社員の多くはポテンシャル採用です。就活時の面接では「自分はこういうことをしたい」と答えはするけれど、それを実現するために入社するというよりは「会社が成長させてくれるだろう」という期待を少なからず持っており、どこか受け身なところがあることが事実です。
  3. 働き方の変化|リモートワークや働き方改革が浸透し、人間関係の幅が狭まっているのではないでしょうか。これにより、自社内にどのようなキャリアの選択肢があるかを知る機会の減少にもつながっていることが考えられます。
  4. 異動制度の未整備|キャリア面談を実施する企業は増えているものの、若手社員が異動の希望を出してもすぐにかなう可能性が高くはなく、キャリアを考えるにも現実感を持ちにくいようです。

過去でもなく、未来でもなく、「今現在の自分」を軸にする

こうした現状を打破するキャリア研修とは、どのようなものかを考えていきたいと思います。

従来からあるスタイルの研修では、これまでの経験を振り返りながら「WILL-CAN-MUST」を洗い出し、中期的なキャリアビジョンを描くことを主な狙いとしていました。30代以降の社員には有効ですが、20代の社員となると、経験値が少ないために、キャリアビジョンを描こうにも何とか絞り出すといった感覚になってしまいます。これを解決するには、研修の仕立てや前提など、根本から検討し直す必要があるのです。

「立ち止まって、意思を問う静的なキャリア研修」ではなく、「行動しながら、意思を明らかにする動的なキャリア研修」へ。

「セルフ・プロデュース」は、まさにこれを意識したものです。具体的には、自分が所属する会社をフィールドのひとつとして捉え、今、関心があることを起点にして試行錯誤と学びを繰り返しながら自分のキャリアの可能性を切り拓く。そうしたイメージです。

誰もが経験があると思いますが、入社して数年も経つと、ようやく仕事にも慣れて良くも悪くも勤務先の会社や上司、仕事に対して、不満が表出してくるもの。実際には多様な経験や人的ネットワーク、機会がすぐそばにあふれているのに、視野が狭まってそこに気づけなくなってしまいます。

そこで、あえて自社をキャリアの「フィールドのひとつ」として客観的に捉えてみることで、自分が身を置いている環境の可能性も見えてくる。そのように考えています。

もうひとつ、ほとんどの若手社員は「WILL」や「CAN」の自己認知が定まっていないのではないでしょうか。同期や先輩と比較しては「自分はまだまだだ」と思ってしまうでしょうし、「CAN」への手ごたえが曖昧だからこそ、何をしたいのか、組織内でどのように見られたいのか、どのようなフィールドのプロとして仕事をしていきたいのかがわからず、キャリアビジョンも描きにくくなってしまいます。

であれば、今、この瞬間に関心を持てることを起点に実際に行動を起こし、小さくとも手ごたえをつかんでいく。そうすることで、ボトムアップ的にキャリアの可能性を切り拓いていけるのではないかと思っています。

主体的なキャリア開発への契機をつくる
PBL型のプログラム

※PBL…Project Based Learning

「セルフ・プロデュース」では、「Self-Produceサイクル」として「越境動機」「仮説試行」「学習・貢献」「隣接可能性」の4つのステップを設定。これらを繰り返し回していくことで、個々の参加者が自分なりのキャリア観をはぐくんでいくことを想定しています。

ここでいうキャリア観には、大きく3つがあります。

  1. 自己のキャリアの俯瞰・考察|これまでのキャリアが自分にどのような意味や意義があったのか、満足しているか否かといった評価、今後のキャリアへの展望など。
  2. 仕事における自己イメージ|「仕事人」としての自分の「CAN」「WILL」を認識。
  3. キャリアイメージの変化・成長|自分なりにキャリアそのものに対する考え方を深め、キャリア自律への意識を高める。

簡単にプログラムの全体像についてもご紹介します。

「セルフ・プロデュース」は2日間のオンラインワークショップ形式をとっており、実際に仮説試行を進めていくことで「Self-Produceサイクル」をまわすイメージをつかみ、主体的なキャリア開発への手ごたえや自信を育てることが狙いです。

まず、Day1では「越境動機」と「隣接可能性」のタネを明らかにし、「仮説試行」への準備を行います。自己や自社を俯瞰しながら自分の興味や関心を洗い出し、好奇心や問題意識が重なるメンバー同士でチームを組んでプロジェクトを立案。このプロジェクトは、Day2までの期間に実施してもらいます。

Day2は、「越境経験」の学びから“少し先”のキャリアを可視化し、次の一歩につなげることを目指します。インターバル期間中に実施したプロジェクトでの経験を内省し、これから先の生活や仕事へどのように展開できるかを具体的にイメージ。さらには今すぐにでも起こせるアクションを洗い出し、研修終了後の「「Self-Produceサイクル」への道すじをつけて締めくくります。

若手社員が自信を持って能動的に、
生き生きと働けるように

 

あらためて「セルフ・プロデュース」に込めた思いをお伝えできればと思います。

  • 会社をひとつのフィールドとして捉え、自分のキャリアを俯瞰して考える
  • 「5年後、10年後にやっていたいこと」ではなく、「今の自分がやりたいこと、関心があること」に目を向ける
  • 「他者に期待されていること」から考えるのではなく、「自分はどのように貢献していきたいか? どのような価値を届けたいか?」に着目する
  • キャリア開発行動に「論理的な理由」や「短期的な成果」は求めず、「試行錯誤」や、その過程で得た「学び」「貢献への手ごたえ」を尊重する

 

働きながら新しいことを始めたとき、誰かに「何のために? それは仕事に役立つの?」と問われてしまうと、「興味や関心が湧いたからやってみたい」という、ポジティブさや好奇心がそがれてしまうことがあると思います。

他者から見ればささいな種まきであったとしても、のちにそれが本人のキャリアを大きく成長させることもあるはず。失敗してもいいから試行錯誤を重ね、小さくとも手ごたえを感じてもらえるよう、参加者本人の意思や行動を尊重していきたいと考えています。

 

その結果、参加者本人はどのように変化するのか。主に次のような成長が期待されます。

  1. Confidence|キャリアに対する自信をはぐくむ。自分の「CAN」と「WILL」を実感し、キャリアを一歩進める手ごたえが得られます。
  2. Proactive|受け身からの脱却。好奇心喚起や、共に外へ踏み出す仲間づくりによって、行動への意欲や自信が高まります。
  3. Engagement|エンゲージメントの醸成。自身のフィールドである会社や事業において提供できる価値や可能性を見つめ直すことで、エンゲージメントにつなげられます。

 

日本の若手社員がワクワクしながらキャリア開発や仕事に挑む。そうした未来を実現できるよう、これからも伴走し続けていきます。

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セルフ・プロデュース研修 企画者
杉本 麻祐子(株式会社ウィル・シード HRD事業部 企画部リーダー)

大学院修了後、TOTO株式会社入社。2017年ウィル・シードに参画し、コンサルタントとして人材開発支援を行いながら、高校生向け起業家プログラムのファシリテーターなどを務める。2022年7月より現職。オンボーディング施策や若手社員向けの新規コンテンツの企画・推進を行っている。

セルフ・プロデュース研修 商品開発者
木下みらい(株式会社ウィル・シード HRD事業部Research&Developmentグループ リーダー)

ラーニングデザイナーとして、人材育成施策の要件定義~研修設計を手掛けながら、研修講師として新人・若手施策にも登壇。設計部マネジャーとして社内の業績・人・組織のマネジメントに携わったのち、Research & Development グループを立ち上げ。現在は「#若手の自律的キャリア」「#異業種」「#Project Based Learning」などのキーワードにまつわる育成コンテンツの開発を進めている。

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