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若手育成│QUEST 2022|人事向けセミナー

「渋滞学」の創設者で、イグノーベル賞を受賞された東京大学の西成教授をお招きし、『世界を横にひろげて、好奇心を育め』セミナーを開催しました。分野を横断して学び世界を横にひろげた結果、「渋滞学」という新たな学問を生み出した西成教授だからこそ語れるユニークなエピソードが盛りだくさんだったセミナ―の一部を抜粋してお届けします。

西成教授 基調講演『世界を横にひろげて、好奇心を育め』


| 思考体力とは?

体力というのは2種類あるんですね。1つは身体的な体力ですが、もう1つ、思考の体力もとても大切です。思考体力があることで、粘り強さや全体最適を作れる事につながっていきます。

思考体力は分解すると2つあります。

  • 1つ目は、何段も登っていける力、多段思考力です。
  • 2つ目は、どこに向かうのか見定める力、大局力です。

たとえば皆さん、晩ご飯は何を食べるか考えてみてください。歩いているとカレーの匂いがして「カレー食べたいな、今晩はカレーだ!」と、そう決めた人は1段思考です。次に「昨日はお肉を食べたな、今日はバランスを考え魚にしようかな」となると2段考えていますよね。さらに「明後日はパーティーがあるな。そういえば一昨日はあれを食べたな」と、あれこれ考えて決める人が多段思考なんです。

日常においても色々と考えている人はリスクに強いですし、一緒にいても気持ちいいですよね。先を読んで考え準備をしているので、「こうなったらこうなる」という可能性を常に考えていて、何が起きても動じないんですよね。多段思考力を鍛えると「それは私と関係ない」って思わなくなります。何段か登るとすべて自分とつながるんですよ。あらゆるものが自分とつながる。そこで好奇心が広がっていくし、情報の入ってくる量がまったく違います。自分と関係ないものは世の中にないとわかります。

2つ目の大局力は「時間」と「空間」のことです。
先を読む「時間」は、先々どうなるのかを考えて現状を見直す、あるべき姿の設定に関わります。そこからバックキャストして現状とあるべき姿の差を埋めていくのがバックキャスト型改善といいます。

ただ、残念ながら多くの企業がフォアキャスト型改善です。つまり現状をみんなで分析して悪い部分をピックアップし、優先順位をつけて改善しています。もちろん悪くはないのですが、フォアキャスト改善では「どこに向かうのか」がわからないんです。あるべき姿が決まっていないと、実は意味がない。何の目的のためにやってるのか、バックキャストすると見失わないですよね。でもなかなかできないんですよね、短期的な視点に慣れると長期的なプラン目指すのは難しくて。

もう1つは「空間」です。人間は目の前だけではなく両脇も見る事ができますよね、周辺視野って言いますが。今ここで私が話している時、例えばヨーロッパでは戦争が起きている。そういう風に周辺を空間的に考えられるかだと思います。

| なぜT字型が大切なのか

私が好きな言葉に「1つの事しか知らないのは何も知らないのと同じ」と言う言葉がありまして、大学の専門教育への警鐘でもあるんですね。大学では1つの事をひたすら深掘りしているんです。そうすると他は何も知らないままで相対化できないんですよ、自分の知識を。

でも大切なのはT字型のように横への広がりをもつこと。もちろん1つの分野の専門がないとダメですが、さらに幅広く知らないとダメで。専門が無くただ色々と知っているだけの人もダメで、大切なのはT字型です。あらゆるものが自分とつながると、自分の専門とつながって全部活かせるんですよね。例えばバイオエタノールをどう作るのかを農学部の研究者と一緒に考えたり、日銀の方とバブル崩壊について渋滞分析をしたとか、あらゆる研究をやってきたんですが、それは私にとってはT字型を実践しているつもりです。

(以上、講演の一部を抜粋して掲載)


  • ゲストスピーカー
    西成 活裕   東京大学先端科学技術研究センター教授

東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)の学位を取得。専門は数理物理学。様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書「渋滞学」(新潮選書)は講談社科学出版賞などを受賞。文部科学省「科学技術への顕著な貢献 2013」に選出、2021年「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に与えられるイグノーベル賞を受賞。日経新聞「明日への話題」連載、日本テレビ「世界一受けたい授業」に多数回出演するなど、多くのメディアでも活躍している。

  • 共催│東京大学エクステンション株式会社

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