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- 2026.07.06
- 新入社員
withAI時代の新入社員育成にどのように向き合うのか?
生成AIは、すでに新入社員にとって身近な存在になっています。2026年度新入社員3,362名への調査では、約99%が学生時代にAIを利用しており、学業・就職活動・日常生活の中で幅広く活用している実態が見えてきました。本コラムでは、調査結果と人事担当者との対話をもとに、AIと共に育ってきた新人を企業がどう受け止め、育成の仕組みをどう再設計していくべきかを考えます。
■3,362名の調査と人事担当者との対話から考える、AI時代の新入社員育成
生成AIを新入社員に使わせるべきか。どこまで使用を認め、どのようなルールを設けるべきか。企業の人材育成では、こうした議論が増えています。
しかし、2026年度の新入社員にとって、生成AIは入社後に初めて学ぶツールではありません。学生時代から、学業や就職活動、日常の困りごとに使ってきた身近な存在です。
ウィル・シードでは、当社が研修を提供した64社の2026年度新入社員3,362名を対象に、生成AIの利用実態と、AI時代の「考えること」に関する意識調査を実施しました。また、新入社員育成フォーラム(※)では、調査結果を共有した後、人事・人材育成担当者同士で対話を重ねました。
本コラムでは、調査結果だけでなく、データを見た人事担当者が何を感じ、どのような問いを持ったのかも交えながら、AI時代の新入社員育成を考えます。
(※)新入社員育成フォーラム:https://www.willseed.co.jp/seminar/hrdtokyo260617/
■生成AIを「使うかどうか」は、もう問題ではない

調査では、新入社員の約99%が学生時代に生成AIを使った経験があり、77%が週に数回以上利用していました。ほぼ毎日使っていた人も33%に上ります。AIは、すでに一部の学生だけが使う特別なツールではありません。
今年の新入社員は、AIを知らない状態で会社に入ってくるのではなく、すでに自分なりの使い方や距離感を持って入社してきます。したがって、企業側が問うべきことは、「新入社員にAIを使わせるか」ではなく、「AIを使うことが前提となった新入社員を、組織としてどう受け止めるか」ではないでしょうか。
フォーラムの対話では、研修中に「AIを使ってよい場面」と「使わない場面」を分けても、無意識にAIを使う新入社員がいたという事例が共有されました。そのうえで、「止めるべきか、もっと使わせるべきか、育成側も判断がつかない」という率直な迷いが語られました。
ここから見えるのは、単に利用ルールを決めれば解決する問題ではないということです。新入社員の方が上司・先輩よりAIに慣れている場合、適応を求められるのは新入社員だけではありません。AI活用は、新入社員個人のリテラシー教育から、職場全体の仕事の進め方をどう更新するかという組織課題へ移りつつあります。
■AIは「作業の道具」から「頼る相手」へ

新入社員は、AIを何に使ってきたのでしょうか。学業での用途を見ると、「理解しやすく解説してもらう」「文章表現を改善してもらう」がそれぞれ59%で上位となりました。一方で、考えの整理、壁打ち、別の視点の提示、論理の弱点の指摘など、使い方には幅があります。
さらに日常生活では、困りごとや就職活動だけでなく、不安やモヤモヤの整理、人間関係、将来やキャリアについて考える際にもAIが使われていました。
「あなたにとって生成AIはどのような存在か」という自由記述を分析すると、「ただの道具」と捉える人は32%にとどまり、助手、相棒・パートナー、心の支えなど、何らかの「相手」として捉える人が68%でした。
フォーラムでは、「これまで人に相談していたことが、AIに移っていくのではないか」という問いが挙がりました。AIは時間を選ばず、相手の反応を気にせずに相談できます。考えを整理してから上司に相談できるという点では、対人コミュニケーションの質を高める可能性もあります。
一方で、職場に相談しやすい関係や仕組みがなければ、新入社員は「まずAIに聞く」という行動を取りやすくなります。AIの中で本人が納得してしまえば、上司・先輩は新入社員の悩みや思考の過程を把握しにくくなるでしょう。フォーラムでも、AIと人を場面に応じて使い分ける判断を、新入社員にどう教えるかが悩ましいという意見が出ました。
AIが相談相手になるほど、人との対話には何を期待するのかを、職場側が改めて定義する必要があります。相手の経験や職場の文脈を踏まえて問い返すこと、本人がまだ言葉にできていない違和感を捉えることは、人だからこそ担える役割です。
■AIを使う新入社員は、「自分で考えていない」のか

新入社員が日常的にAIを使っていると聞くと、「AIに頼ることで、自分で考える力が育たないのではないか」という懸念が生まれます。
しかし、調査では85%が、「まず一人で考えを整理し、自分なりの考えを持ってから周囲やAIに相談したい」と回答しました。AIを使う世代であっても、本人たちは「まず自分で考えたい」という意識を持っています。
ところが、「まず自分で考えたい」人と「最初から周囲やAIと考えたい」人を比較しても、実際にAIへ任せていることには、ほとんど差がありませんでした。つまり、「自分で考えたい」という意識と、実際の考え方やAIの使い方は、必ずしも一致しません。
これは、新入社員が考えていないという話ではありません。AIとの壁打ちを通じて考えを形にする人もいれば、自分の考えを整理・検証するためにAIを使う人もいます。AIと対話しながら進めること自体が、本人にとっての「自分で考える」プロセスになっている可能性があります。
フォーラムでは、「AIから出てきた答えが、自社の方針や仕事の目的に合っているかを最後に判断する力が必要ではないか」という意見が出ました。また、「壁打ちを続けるうちに、最初の論点から外れてしまうこともある。最後に何と照らし合わせるのかが重要だ」という指摘もありました。
重要なのは、AIを使ったかどうかではなく、何を目的として考えたのか、どのような仮説を持っていたのか、AIの答えを何と照らし合わせ、なぜ最終的にその答えを選んだのかという思考のプロセスです。
AI時代の「自分で考える」とは、一人でゼロから答えをつくることだけではありません。自分なりの目的や判断軸を持ち、AIから得た答えを問い直し、選び直すこと。そして、そのアウトプットを、関係者に伝わる意味・文脈へと置き直すことではないでしょうか。
「自分で考える」ことの意味が、変わり始めています。
■「意識づけ」から「経験から学ぶ仕組み」へ
新入社員育成では、これまでも「主体的に考えよう」「まず自分なりの意見を持とう」と伝えてきました。これらは、AI時代にも重要です。ただ、今回の調査では、85%の新入社員がすでに「まず自分で考えたい」という意識を持っていました。それでも、その意識だけでは、実際のAIの使い方や思考のプロセスを説明できませんでした。
だとすれば、必要なのは、さらに強く意識づけることだけではありません。
ウィル・シードでは、AI活用の質を分ける一つの鍵として、「何のために考えるか」という目的意識があるのではないかと考えています。これは本調査から得られた仮説ですが、目的意識は、言葉で教え込むだけでは育ちません。
自分なりの仮説を持って行動し、実際の相手や現場に触れ、想定との違いを知る。その経験を振り返ることで、「何のために考えるのか」「何を基準に選ぶのか」が自分自身のものになっていきます。
これからの新入社員育成では、研修、OJT、日報、1on1の中に、「最初にどのような仮説を持ったか」「AIを何のために使ったか」「実際の相手や現場から何が返ってきたか」「AIの回答と実態にはどのような違いがあったか」「次に何を変えるか」といった問いを組み込むことが重要です。
AIに答えを求めるのではなく、自分の仮説を検証するためにAIを使う。そして、AIの中だけで完結させず、実際の人や現場に触れる。この往復が、AI時代に必要な思考力と目的意識を育てるのではないでしょうか。
■問われているのは、新入社員だけではない
フォーラムでは、AIを使って考える力だけでなく、相手の感情や置かれた状況を受け止めるなど、「人間だからこそできること」にも目を向ける必要があるという意見が出ました。
そして、これは新入社員だけの話ではありません。新入社員が先に適応し始めた「AIと考える」という仕事の仕方を、上司・先輩はどう受け止めるのか。成果物だけでなく、目的・仮説・判断のプロセスをどう見るのか。育成する側も、仕事と育成のあり方を更新する必要があります。さらに、新入社員や上司のAI活用を、何をもって望ましいと判断するのか。人事には、利用ルールを定めるだけでなく、AI時代の仕事と育成における評価軸を持つことも求められます。
一方で、各社の現在地は異なります。まずは利用実態を把握する段階にある企業もあれば、利用ルールやリテラシー教育を整えている企業、AIを前提に仕事の進め方や育成の仕組みそのものを見直し始めている企業もあります。
すべての企業に共通する一つの正解があるわけではありません。自社は今どのフェーズにあり、次に何を考えるべきなのか。今回の調査結果を一つの材料として、各社の異なるフェーズや課題に合わせて、withAI時代の新入社員育成をどのように再設計していくか、ぜひご一緒に議論させてください。