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日本航空株式会社
人財本部付担当部長
蘆野健 氏

一歩先行く
価値創造人財の育成

「挑戦」と「成長」で
企業価値を高めていく

私たちJALグループは、目指す将来の姿として〈「世界のJALになる」×「一歩先を行く価値を創る」=「常に成長する」〉をキーワードとした「JAL Vision」を掲げました。

そして、「JAL Vision」実現へ向けた2017-2020年の中期経営計画では、フルサービスキャリア事業の一層の充実と共に、フルサービスキャリア事業以外のビジネスの創造・育成、訪日旅客数拡大にともなう新たなビジネスへの取り組みなど、事業領域を拡大することを成長の柱の一つとしています。

また、私たちが求める人財像として「多文化を尊重し、適応する」という項目を加えました。世界の多様な文化に積極的にふれあい、異なる文化・価値観を尊重できる人財ということですが、今後、社員にはまさにこうした行動を求めたいと思っています。

蘆野 健 氏(日本航空株式会社 人財本部付担当部長)
蘆野 健 氏(日本航空株式会社 人財本部付担当部長)

環境の変化に即した
イノベーションを起こす

蘆野 健 氏(日本航空株式会社 人財本部付担当部長)

JALグループの人財や社風について、アセスメントの結果を分析したところ、いくつかの強みや啓発点が浮き彫りになりました。強みは「謙虚」「配慮姿勢」「協働意識」。組織人としては優秀である一方、課題として「与えられた枠内でしか行動できない」「既存の枠組みにおさまらないものは誰も責任を取らない」「変革者としての資質が不足している」「上司の指示を確実に実行することが重視され、新しい取り組みをしようとしてもサポートが得られにくい」「個々人が持っている潜在能力を発揮できていない」ことが指摘されていました。

お客様の人命をお預かりする航空事業という特性上、安全をベースにすることは欠かせません。しかし、先に申し上げたように、環境の変化に適応していくことを考えると、これに加えて新しい発想・変革させる発想――、まさにイノベーションですね、これを起こさなければ、これから先、やっていけないと思っています。

そこで、まずはリーダークラスの人財をいかに変革人財に変えていくか、これは人財育成における一つのテーマとなりました。リーダーの心持ちや意識が組織に与える影響はとても大きいからです。もう一つ、新しい価値創造を実現できるプロフェッショナル集団になるために、自分たちの仕事の本質や領域をあらためて見つめ直すことも欠かせないと思っています。まず自らの仕事を深く理解することが新しい価値創造の出発点、そのうえで外の世界とも積極的に関わっていくことで着実に実を結んでいくのではないでしょうか。

あえて海外の異業種に飛び込み、
さまざまな価値観の刺激を受ける

2010年に経営破綻してからの数年間は立て直しに専念せざるを得ず、思うように海外派遣ができませんでした。「いずれは海外で働けるかもしれない」という期待感を持って入社してきたものの、その通りにならずにフラストレーションを感じていた社員もいたことでしょう。しかし、苦しい時期をようやく抜け、これまでの遅れを取り戻すスタートラインに立つことができました。もともと持っていたコア領域をきわめることはもちろん、事業領域を拡大していくための手を打ち続けていきたいと考えています。

その一つが、2017年からスタートした「グローバルチャレンジプログラム」。「JAL Vision」で掲げた「世界のJALになる」ための施策です。3週間、海外で異業種での実務経験を積みながら、異なる価値観や新たな発想、意思決定のスピードを学ぶことで、「一歩先行く価値創造」につなげていくことが狙いです。

蘆野 健 氏(日本航空株式会社 人財本部付担当部長)

このプログラムの対象は20代・30代。語学力の条件はありますが、自ら手をあげる積極性を重んじて公募制としています。マレーシアやベトナム、インドなど、派遣先国は多岐にわたります。第1回目の実施では22名を派遣しましたが、誰もが相当刺激を受けた様子です。

公募制ということもあり、海外志向が強いメンバーばかりだった側面はありますが、「日本でのイメージや偏見に左右されないことの大切さを知った」「思い込みを外すことで、新たな発見が得られた」「日本式の〈空気を読んで、よく考えて〉からでは遅いことに気付いた」といった感想が寄せられました。このプログラムの参加者から現地での経験を聞き、「自分も参加したい」と手を挙げる者も出てきました。周囲の若手世代にも良い影響を与えていることがうかがえます。

彼らを送り出す側、つまり、上司の意識改革も必要です。年に1度、部下を持つ評価者を対象とした研修を実施し、会社の現況、遅れを取っている部分や改善すべきところを理解してもらうようにしています。「変わらなければならない」という意識を管理職レベルでも醸成することが大切です。直接「グローバルチャレンジプログラム」に付随しているわけではありませんが、複線的・複合的に意識改革を進めることにつながっていると感じています。

慣れない環境や異文化に飛び込み、自分はいったいどれほどのことができるのか。プログラムを終えた参加者は、新しい気づきを得たり、成長のきっかけをつかんだりと、着実に成長を遂げています。実際、帰国1か月後の参加者の行動変容として、「航空以外の業界の動向にも関心がわき、より広い視野で考えるようになった」「以前は『やっても意味がない』と考えて動かないことがあったが、今はとにかくやってみて、行動しながら直していけば良いと考えるようになった」など、頼もしい声が上がっています。

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