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中核人材の成長ヒストリー(3)

今回のテーマは「上司の存在」。ハイパフォーマーたちは、自身のキャリアの中で、上司の存在をどのように捉えていたのでしょうか

「成長環境因子」における上司の位置づけ

ハイパフォーマー調査の概要については、コラム「企業で一目置かれる中核社員の特徴」をご参照ください。

調査では、インタビューに先んじて計120問のアンケートを行っています。その中で「20代に会社を辞めたいと思ったことがあるか?」という設問がありますが、この設問の回答を、「1回も思ったことがない」群(a群)と「1回以上思ったことがある」群(b群)に分け、別の設問である「20代の自己形成に寄与した環境要因」とのクロス集計を行うと、上司という存在について興味深い数値が見えてきました。

上記4系統の環境要因においてa群、b群双方で高い数値が出たのは「仕事そのもの」です。未知の仕事、広い責任範疇、量的側面など仕事特性が与える影響がハイパフォーマーにとって重要であったことが明らかである一方、上司・先輩の関与はa、b両群ともに相対的に低めの数値で、かつ、唯一b群の平均値がa群の平均値を上回っています。

更に、上司・先輩のカテゴリに属する詳細設問では、「きめ細やかにやり方を教えてくれた」「計画的に自分の教育を行ってくれた」のa-b差分がそれぞれ「-0.75」「-0.30」と、全詳細設問の中で、マイナス差分のワンツーフィニッシュを飾っています。

「離職意向と成長環境の相関関係」については、質・量共により一層の分析が必要な段階ではありますが、今回の結果を見ると、挑戦志向のハイパフォーマーかつ、安定した帰属意識がある方々においては、上司の“直接的な”関与の度合いが与える影響は、さほど大きくない、可能性が見えてきました。

“間接的な”存在意義

とはいえ、インタビューを含めて今回の対象者を掘り下げていくと、結局のところ上司の存在が重要なファクターとなっている、ということは疑いの余地がありませんでした。

ポイントは、前述のような「細かな指導」「二人三脚」といった“直接的な関与”でなく、「余白のある仕事アサイン」「意思の重視」「最終的な安心感の提供」といった、プレーヤーにとっての“間接的な関与”にあります。

この点は重要で、メンバー側から見れば「がっつり介入」でも「単なる放任」でもない「挑戦のための環境づくり」のようなマネジメントスタイルだった、ということです。

実は先ほどのクロス集計において、上司の項目でa群の平均スコアがb群を大きく上回った詳細設問がありました。

それは「上司は必要に応じて適切なアドバイスをしてくれた」というものです(a群の平均スコアが「4.0」、b群が「3.45」)。「主体は本人、必要ならば上司が関与している」とも言えます。更にインタビューでは、以下のような話が上がりました。

お客さん資料や、その説明も全部任されていたのですが、論理性が乏しいとすぐにフィードバックが入ってくるんです

『お前はどう思ってるんだ』ということを事あるごとに問いかけてくる方で、そこは非常に鍛えられました

上司には感謝してます。お父さんみたいな方たっだんです。要は、何してもある程度後ろで守ってくれるっているのが分かったので…

前のコラムで論じてきたような「今回の対象者が持ち合わせている素質」も多分に影響しているでしょう。「その上司は、他のメンバーにとっても良き上司だったか?」という追加インタビューに対しては、「うまくいかなかった人もいます」「もう少し面倒を見て欲しい、ちゃんとやってほしい、という人はいましたね」といった反応も多く返ってきました。

しかし同時に「その上司がいなかったらあなたはどうなっていたと思うか?」という質問に対して多くのハイパフォーマーが語ったことは、「今の自分はない」「十分な経験ができなかった」「いちいち介入されていたら、持たなかった」といったことでした。

全ての組織、個人に通ずるマネジメントの「魔法の杖」は存在しません。大切なのは、これからを見据えたときに、どのような人材に「残ってもらいたいか」「より活躍してもらいたいか」ということなのではないでしょうか。

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