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オンラインとオフライン ファシリテーションは何が違う?①

Withコロナ時代、時間と場所の制限を超えた「オンライン学習」が増えています。個人が学びを自律的、かつ主体的に得られる環境が増えたことは大きなパラダイムシフトですが、企業主催のオンライン研修では難しさもあるようです。本コラムではその要因をファシリテーションの側面から、考えていきます。

 

オンラインでの双方向型学習は難しい?

企業主催の「オンライン研修」では「参加者の反応が見えづらく、主体的な発言を促しても出てこない」「場が停滞し、何を考えているのか分からない」など、講師と参加者の双方向コミュニケーションを実現させる難しさをよく耳にします。そして、「やはり双方向型学習はオフラインだね」と早計に結論づけるケースが散見されます。

先にお断りすると、本コラムでは「オンラインとオフライン、どちらが良いか」という議論をしたいわけではありません。どちらも得手不得手があります。ただ、オンラインにも可能性があるにもかかわらず、先入観や少しの失敗で選択肢から外れることがとても残念です。ゆえに、本コラムでは「双方向型オンライン研修の可能性を探る」という視点で書いております。

プログラムの適合とファシリテートの適合

オンラインの利点があるにもかかわらず、双方向型学習ではオフラインに及ばないという認識に至ってしまう。この要因は何が考えられるでしょうか?

1つは「プログラムの適合」(※1)です。プログラムの内容を「オフラインからオンラインに乗せ換える」だけでは上手くいかないことが多いのも事実です。最近では「事前のインプットを動画やe-leaningで行い、オンライン集合研修ではアウトプットを中心にしたプログラム設計にする」といったように、学習体験そのものを再定義する考え方も出ていますが、これはプログラムを適合させた一例でしょう。

 

(※1)オンライン研修のプログラム企画を知りたい方は以下のコラムもご覧ください。

 

もう1つは「ファシリテーションの適合」です。どんなにプログラムを整えたとしても、研修は「人」で成り立ちます。オンラインでは研修の臨場感が伝わりにくくなりました。そのため、双方向コミュニケーションを活性化させる上ではファシリテーションの重要性はますます大きくなります。インターネットなどでオンラインのファシリテーションについて調べると、「集中力が続かないので講義は10分程度で」「体で大きく反応を促しましょう」といった実務面から「照明が大事」「モニターは自分用と参加者用を2台用意しておくと便利」といった環境面の整えなど、「HOW」の情報は多くリーチできるようになりました。しかし、研修をデザインする上で何が違うのか、という本質についての見解はまだまだ少ない印象です。

今回は「ファシリテーションの適合」について前半・後半に分けて、説明していきます。前半にあたる本コラムではオンラインとオフラインの「構造の違い」、後半のコラムではファシリテーションの「あり方」、「やり方」に注目して整理してみました。

オンラインとオフラインの構造的な違い

オフライン学習とオンライン学習の違いは何でしょうか?それぞれの特徴の違いを「オフラインは●●だけど、オンラインは▲▲だな・・」と対比で考えてみると皆さんの頭には何が浮かんでくるでしょうか?我々は以下の4つにまとめてみました。

場の性質の違い

「場」とは「人が一緒にいる場所」を指します。オフラインでは1つの部屋に参加者が集まるため、参加者への「強制力」が働く場となります。研修に対する関心の有無にかかわらず、参加者が勝手な行動を起こすことが難しい環境です。一方で、オンラインでは個人の環境から学びの場にアクセスします。参加者が内容を受け入れられない場合は極端な話、研修と関係ないことに取り組むことも可能です。そのため、参加者が「離脱」しやすい場となります。つまり、参加者が如何に主体的に参加し続けたいと思えるか、もしくは参加者に参加意欲とメリットを感じてもらえるかが重要な論点になりそうです。

位置関係の違い

オフラインでは講師と参加者が向かい合って対峙する形式がほとんどです。スクール形式であっても、島型形式であっても違いはそこまで生じないと思われます。つまり、対峙関係であるがゆえに、講師対参加者という「教える人・教わる人」の構図が完成し、場に緊張感が生まれます。講師が場をグリップすることも比較的容易でしょう。プレゼンスやトーク技術を持つ講師が強みを発揮するのも頷けます。一方、オンラインでは、全員が一つの画面に横並びでフラットに映ります。例えば、ZOOMのギャラリービューであれば、最大49名分の1人として講師が映るため、画面上は平等な状態で講師と参加者が並びます。講師が魅力やパワーで押すだけのスタイルでは、参加者との相性が良くないことで、参加者が「離脱」する懸念も高まるかもしれません。これは「フラット・横並び」という構図に反するからです。「参加者が主役、参加者と共に」という前提を講師は持って研修に臨んだ方がよさそうです。

情報の捉え方の違い

オフラインでは「場の情報性」(※2)が存在します。故に、参加者は研修内容だけでなく、そこで起きていることを五感で感じながら、学びを深めていきます。その場の「空気」も含めて全てが学びの素であり、これはオフラインの利点です。一方、オンラインは「場の情報性」がオフラインと比べると明らかに失われます。映像を観る「視覚」と音を聴く「聴覚」に頼ることがほとんどです。もちろんVR・AR等を活用したオンライン学習の技術革新も起きていますが、現時点での活用はまだまだ限定的です。

(※2)ここでの「場の情報性」とは「人が一緒にいる場所には多種大量の情報が連続的に生まれている」ことを意味します。詳しくはコチラのリモートワーク特別コラムをご覧ください。

学び方の違い

オフラインでは、五感を使って、学ぶからこそ、講師や参加者の話し方、共有された内容に自分の心を揺さぶられたりします。意識的にも、無意識的にも様々な情報にアンテナが立ち、情報が目まぐるしく入っては消えていきます。消えている情報もありつつ、研修全体としては個人としての学びが生まれている、オフラインではこのような経験もあるのではないでしょうか。このような学び方を「フロー型学習スタイル」と呼んでみます。一方、オンラインでは視覚と聴覚に集中するため、画面に映る情報、話される情報が全てです。放っておくと、参加者は情報をため込むだけになるでしょう。このような学び方を「ストック型学習スタイル」と呼んでみます。「オンラインはスキル学習に向いている」と言う方はこのような構造を踏まえての考えかもしれません。双方向型オンライン研修を志向するならば、「ストック型学習」になりやすい構造を考慮して、アウトプットの機会を取り入れた進め方を出来るかが論点になるでしょう。

以上、オンラインとオフラインの構造の違いとその違いから生じる影響について書いてきました。これらの違いを踏まえ、双方向型オンライン研修を成立させるために、ファシリテーションは何を変えればよいのか。後半のコラムではファシリテーションの「あり方」と「やり方」に分けて詳しく見ていきたいと思います。

コラム執筆者

岸本渉(きしもとしょう)
X-BorderFantasy室長。博報堂、ファーストリテイリングを経て、ウィル・シードに入社。コンサルタント・営業責任者を経て「越境で共創する、意志ある未来づくり」を志向する新プロジェクトX-Border Fantasyを立ち上げる。越境学習に可能性を見出し、様々な大企業リーダー変革の越境プロジェクトを企画・推進する傍ら、ファシリテーターとしても、組織で働き成果を出すこと、人が自分らしく自分の本物と繋がること、この両方を諦めない場づくりを追求している。

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