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- 2026.10.19
- レポート
【AI時代の学びを再設計する|01】人が考えるために、AIに何をさせるのか
生成AIを研修に取り入れるうえで、「AIに何をさせるのか」は学習効果を大きく左右します。 NTTドコモソリューションズで実施したプロステップ研修では、受講者に答えを教えるのではなく、問いを返しながら思考を深める「研修専用AI」を開発しました。 なぜ、あえて「答えを出さないAI」をつくったのか。設計を担当した株式会社Chinookの山田氏に聞きました。
―まず、今回の「研修専用AI」は、私たちが普段使っている生成AIと何が違うのでしょうか。
山田:一番大きな違いは、今回の研修内容を理解したうえで、受講者と対話できるようにしていることです。
今回はRAGという仕組みを使っています。一般的な生成AIでは、AIが持っている知識やWeb上の情報などをもとに回答しますが、今回は検索する対象を、この研修のコンテンツにしています。
そのため、一般論としての課題解決に基づいて回答するのではなく、「この研修では何を学んでいるのか」に沿って対話することができます。
研修資料には、文章だけではなく、図や表、マトリクスなども多く含まれています。そうしたスライドについても、「この図は何を意味しているのか」「この演習では何を考えてほしいのか」を一度テキストとして整理し、AIが参照できるようにしました。
技術的な仕組みはいろいろありますが、シンプルに言えば、今回の研修をよく理解している壁打ち相手をつくったということです。
―研修内容を理解しているなら、受講者に答えを教えることもできますよね。なぜ、あえて「答えを出さない」設計にしたのでしょうか。
山田:今回のAIは、あくまでも「学びの伴走者」として、研修の効果を最大化させることを目的としているからです。
AIにワークの課題を丸ごと渡して「これをやって」と言えば、生成物をつくることはできます。でも、それでは受講者自身が自ら考えてワークをするのではなく、AIにやってもらうことになってしまいます。
そこで、受講者の中にある考えや創造性を引き出す役割になるように設計しました。
具体的には「AI側から積極的に質問する」「一度の回答を短くして、何度もやり取りしながら考えを深めてもらう」といった振る舞いを細かく設定しています。
また、「答えを丸ごと出さない」「受講者の意見に対して、良し悪しを一方的に判断しない」「長文で回答しすぎない」というように、学習の目的から考えて、あえてさせなかった振る舞いもあります。
―「学びの伴走者」としてのAIの振る舞いは、何を手がかりに設計したのでしょうか。
山田:人が教育するときと、そんなに変わらないと思っています。良いファシリテーターは、すぐに答えを教えるのではなく、本人が答えにたどり着けるように問いを置いたり、「思考の補助線」を引いたりすると思うんです。質問によって頭が回り、本人の中にある考えが少しずつ言葉になっていく。
「良いファシリテーターの役割をAIにやらせるとしたら、どんな振る舞いをさせればいいだろう」という発想で考えています。
僕たち自身、これまで教育の仕事に携わってきたので、その中で蓄積してきた知見や感覚も、かなり活きていると思います。
―実際に使ってみて、どのような手応えがありましたか。
山田:想定していた以上に、たくさん対話してもらえたことは大きかったです。
事前には、一つのワークで4〜5ラリー程度できればいいと考えていたのですが、実際には7〜10ラリーくらいやり取りしている方も結構いらっしゃいました。
一方で、300名を超える方がいると、AIとのコミュニケーション経験も、そもそもAIをどう捉えているかも、本当に十人十色です。実際、人によって使い方にはかなり違いがありました。
同じAIを用意しても、その使い方や学び方は一人ひとり異なります。だからこそ、AIそのものを設計するだけではなく、「このAIは何のためにいるのか」「どう使うと学びにつながるのか」を受講者と共有することも重要だと思います。
生成AIを研修に取り入れること自体は、これから珍しくなくなるかもしれません。
そのときに重要になるのは、「AIを導入したか」ではなく、「その学びの中でAIにどんな役割を担わせたか」です。
AIの性能から研修を考えるのではなく、受講者にどんな思考をしてほしいのかから逆算してAIを設計する。
そこに、AIを学びに活かす一つのポイントがあると思っています。
株式会社Chinookは、AI・システム開発、研修・教育、AEO・GEO支援を通じて、企業や組織の挑戦を支援。課題の整理から企画・開発、導入後の運用・改善まで、顧客とともに考えながら、現場で継続的に活用できる仕組みづくりに取り組んでいる。日々進化するAIの最新技術や動向を捉え、幅広い選択肢から、それぞれの事業課題に適した提案を行っている。