CASE19三カ月間の
新入社員研修からみえた
「オンライン」と
「リアル」の違い

株式会社バンダイナムコ
アミューズメントBANDAI NAMCO Amusement Inc

バンダイナムコアミューズメントのインタビュー風景

新入社員研修のテーマは
“学生から社会人への切り替え”

―今年の新入社員研修はどのようなテーマで企画したかを教えてください。

松崎: 当社が研修期間で重きを置いていることは、「学生から社会人へと意識を切り替える」です。私達からある程度のヒントを出しながらも、職場で期待される新入社員とはどういう存在かを自ら考え気づいてもらう、が大前提にあります。その前提を踏まえ、考える機会、気づく機会をどうつくるのか、が企画のベースです。当初の予定ではゴールデンウィーク(以下、GW)前まで集合研修を行い、その期間に考える機会、気づく機会を設けようと考えていました。例年は集合研修後に店舗研修を行うため、店舗研修までに学生から社会人へと意識を切り替えられるか、を一つの目途としています。

―「学生から社会人への意識の切り替え」とは、具体的にどのようなことでしょうか?

松崎: 学生時代は正解がある中で、自分なりにプロセスを考える、論理的に物事を考える、を求められることが多いと思います。しかし、ビジネスの世界に絶対の正解はないですよね。その都度、その瞬間にどれがもっとも「正解らしいか」を自分で考え、判断しなければいけない。その意識を醸成することが(新入社員研修では)最も重要と考えています。私達のスタンスとしても、「これが正解」という示し方はしません。新入社員が導き出したその瞬間の答えを尊重し、まず一旦は行動させてみることが肝だと思います。新入社員に対しても、研修期間の原則として姿勢で伝えています。

オンライン新入社員研修が長期化し、
予期せぬ主体性が引き出された

―今年は新型コロナウイルスの影響で、当初の計画から大きく変更したと伺っています。

松崎: 当初は例年通り、リアルでの研修(集合研修)を企画していましたが、直前に入社式の中止が決まり、全てのプログラムが一旦白紙となりました。そして、研修のオンライン化が急遽決まりました。さすがに「明日(の研修)は何をやろう」という事は起きませんでしたが、「来週は何をやろう」「再来週はどうしよう」と一週間単位のスケジュールをゼロベースから再編成しなければならなかったので、大変でしたね。ただ、「やるしかない」という事実は変わらないので、オンラインで「何ができるのか」と必死に考えました。

バンダイナムコアミューズメント 経営企画ディビジョン 人事部  田中 靖訓 氏
バンダイナムコアミューズメント
経営企画ディビジョン 人事部
田中 靖訓 氏

田中: (研修の方針が)二転三転する中、6月末まで新入社員(集合)研修を行うことが4月に決まりました。長くてもGWまでと思っていたので、決まった時は頭の中が真っ白になりました(笑)。

松崎: これは困ったぞ、と(笑)。しかし一方では、店舗は営業を止めていたので、新入社員の受け入れと営業再開のタイミングが重なると現場が困る、という配慮も当然あるわけです。最終的には7月1日の配属が決まりました。配属日が決まれば、配属に向けて新入社員に伝えるメッセージも明確になります。配属に向けて何を準備するべきか、前例も正解もない中で自分はどうするか、などを考えてもらいました。

―研修期間が延びたことで、どのような影響がありましたか?

松崎: 配属までの期間が延びたことで、(新入社員に)考えさせる時間を多く作れた点は良かったと思います。例年であれば研修期間は3週間だったので、今年は新入社員がしっかり考える時間をとれました。その結果、自分たちで考え行動するというテーマの下、研修の一部運営を主体的に行うようになったのです。具体的には朝礼と終礼の司会進行を行う日直決めや、出欠の確認を行う、時間管理をさせるなど。最初に「研修の場は自分たちの学習の場なので自分たちで場をつくろう」とは伝えましたが、全部を新入社員に任せたつもりはありませんでした。例年は、私たちが日直に声をかけて号令が始まる、というパターンが結局は多かったからです。

田中: 当初、店舗配属はGW前を予定していました。そのため、新入社員はGW前に現場に行く覚悟、体勢があったと思います。私たちとしては(配属日変更による)モチベーションの低下をとても心配していました。しかし、研修を主体的に運営したことでモチベーション低下が起こらなかったのかな、とも思います。もちろん、新入社員は多少なりとも不安な気持ちを持っていたとは思いますが。

―主体性が発揮されたことには、何かきっかけがあったのでしょうか?

松崎: 今思い返すと、新入社員が主体的に行動する契機となったのは、ある一人の新入社員がグループ分けの提案をしてくれたことです。毎月の目標設定をさせており、目標を達成するために、日次で具体的な目標設定と振返りを行うことにしました。毎日6~7人のグループで振り返りなどを行ってもらい、グループも日替わりにしていました。同期間のコミュニケーションを促す狙いもあったからです。当初は私たちがグルーピングを考える予定でしたが、日直だったある一人の新入社員が「グルーピングを自動的に行えるアプリがあるので、それを使用して自分たちでグルーピングしていいですか?」と提案してくれたのです。

バンダイナムコアミューズメント 経営企画ディビジョン 人事部 アシスタントマネージャー 松崎 裕一 氏
バンダイナムコアミューズメント
経営企画ディビジョン 人事部 アシスタントマネージャー
松崎 裕一 氏

―新入社員からの提案がきっかけとなったのですね。

本当にITリテラシーが高いというか、私たちでは考えたこともない提案だったので、とても嬉しかったですね。オンラインの研修だからこそ起きた出来事だと思います。その後は、日直がグループを決める、という暗黙のルールが自動的にできました。新入社員側としても、人事に決められたグループで研修をやるよりも、自分たちで決めたグループで責任をもって一日過ごすのは重要だと感じました。私はあまり深く考えず了承したのですが、それがきっかけで新入社員も主体的になっていった気がします。

―新入社員からの意見を受け入れる人事のスタンスが、主体的な行動を促している印象を受けました。

松崎: そうですね、そこは当社の社風もあるのかなとは思います。私は旧ナムコに入社して20年以上在籍していますが、自分が提案したことに関しては自由に挑戦させてくれると感じています。もちろん責任も発生します。新入社員がこれから長く働いていく会社で、「自分が言ったことを自分で責任をもってやる」を研修期間に具現化させるには、それ(受け入れる側のスタンス)が大事なことかなと思っています。

長期間だからこそ見えたオンラインで、
できること・できないこと

―改めてオンラインで実施した3カ月間を振り返るといかがですか。

松崎: オンライン化したとはいえ企画のベースはリアルでの実施を予定していた内容です。オンラインに移行した点は、非常に満足いく結果が得られたと考えています。オンラインでも社会人への切り替えという目的は達成できたのではないでしょうか。ただ、オンラインはリアルよりも時間がかかる、丁寧に実施しないと全員に考えを浸透させるのが難しい、とも思いました。リアルの理由、オンラインの理由を明確にした上で、手段としてどちらを選ぶべきかと思っています。

田中: 長期間実施したからこそ、できることとできないことがわかったのかもしれません。「ここはオンラインでできる」、「ここはオンラインではフォローしきれない」という実感が持てたので、今後の研修企画に生きてくると思います。結果的にリアルが持つ価値は上がりましたね。

―研修を終え、配属された新入社員の様子を教えてください。

松崎: 新入社員たちは、3カ月の研修において、達成感や満足感があったようです。「ありがとうございました」という動画付きのメッセージをもらえたことは、とても嬉しかったです。もちろん育成目標に到達できたかと言うと、できてない部分はやはりあると思います。いざ店舗に行くと研修で学んだことや考えたことが抜け落ちることもあるようです。ただ、これはオンラインだからということではなく、例年も起きていることではあります。結論として、オンラインでもリアルでも、起こるべきことは毎年起こると考えています。新入社員たちは今、リアルで会うことを切望しているようです。会社に属している実感を得るためにリアルで会いたいという希望だと思います。そこは研修という形にこだわらず、考えていきたいです。オンラインで繋がっていても、リアルな空間を共有しているわけではないので。

田中: 新入社員を4月に一度だけ集めました。その時は「自分たちはこの会社に入社したのか」という実感を持てたと思います。ただ、それ以降に集まる機会は無かったので、その実感を維持させることは難しかったかもしれません。今後はそういう実感を持てる機会をまた作りたいですね。そして、この実感を持ってもらうことはオンラインだけでは難しいことの一つかもしれません。

―最後になりますが、今年をきっかけに会社全体の人材育成施策が変化していく可能性はありますか?

松崎: 当社の前身であるナムコの創業者、中村雅哉の言葉に「体力のあるものでも、賢いものでもなく、変化に対応できるものだけが生き残れる」というものがあります。ここまで劇的に変化している世界を目の当たりにすると、速いサイクルで変化する社会環境に対応できるよう、当社もシフトする必要があると思います。自分たちの業界だけを見るのではなく、もっと広い視野を持たなければいけないとも思いますし、人材育成もこれまでのやり方から大きく変えていかなければいけないと考えています。

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