CASE04単なる語学研修に
終わらせない
ALP活動の狙いと効果

住友金属鉱山株式会社Sumitomo Metal Mining Co., Ltd

住友金属鉱山のインタビュー風景

新入社員を全員派遣する
海外での研修

―新卒の総合職全員を対象に語学派遣プログラムを導入されていますが、まずは概要から教えてください。

石川:2006年度に始まったプログラムです。入社間もない4月下旬から約2ヵ月間、イギリスやカナダ、オーストラリアなどの英語圏に派遣しています。語学力向上はもちろんのこと、海外の人たちの考え方や異文化を直に体感してもらうことが狙いです。

弊社の主な事業に海外での鉱山開発や工場運営などがあり、総合職として入社した社員の中には、将来、海外で仕事をする社員も少なからずおります。そのため、新入社員のうちから「誰かが海外で働く」ではなく「全員が海外で働く可能性がある」という意識を強くもって、日頃の仕事への向き合い方やモチベーションも変えてほしいと考えています。

異文化適応力を向上させるALP活動

住友金属鉱山のインタビュー風景
住友金属鉱山株式会社
人材開発部 人材開発担当主任 
小早川祐樹 氏

―貴社のプログラムでは語学学校でのレッスンのほか、ALP活動(Action Learning Project)を行っていますね。

小早川:プログラム開始当初は語学力向上に焦点を当てていましたが、将来、海外拠点で活躍するためには、語学力のみならず、異文化適応力も欠かせないことを強く認識していました。

そこで、語学だけでなく、この機会に異文化理解も深めてもらおうと考え、2011年度からALP活動をスタートさせました。語学習得のサブワークという位置づけで、外国人をコアメンバーとして迎え入れ、協働でプロジェクトに取り組みます。

プロジェクトの内容は様々です。過去には派遣先の語学学校で新入学生向けのウェルカムツアーを企画したり、各国の特徴的な文化を紹介するイベントを開催するといった活動が行われました。

―実際に海外に赴任したとき、語学力だけでは立ち行かなくなってしまうのですね。

小早川:そうです。将来、海外に赴任すると、マネージャークラスの業務にあたることが多いのですが、ローカルのメンバーをまとめ上げていかなければならない。日本人とは全く異なるバックグラウンドを持っていますし、日本と同じようにやっていては衝突をまぬがれきれないこともあります。どうしても日本人同士と同じようにはいきませんから。

―ALP活動は、具体的にどのように進められるのですか?

小早川:3人程度のグループ単位で取り組みます。まずは渡航前の事前研修で、ALP活動で何をやるのか、先輩社員や我々人材開発部門のメンバー、ウィル・シードの方にアドバイスを受けながらプロジェクトのテーマを詰めていきます。

我々からは「やるべきこと」「できればやったほうがいいこと」「やってはいけないこと」の3原則〈Must/Want/Don’t〉をあらかじめ伝えますが、テーマ決めは参加者に一任しています。ちなみに、〈Must〉として掲げていることは「コアメンバーとして現地の人を入れ、一緒に企画を進める」「日本人同士で集まらない」など。いわば、ALP活動の効果を最大限に高めるためのルールですね。

渡航後は事前研修で練ったプランを元に進めますが、実際はうまく行かないことが多い。予期せぬ制約があった、現地のコアメンバーから内容に対して指摘を受けたなど、半分程度のグループは現地で軌道修正することになります。

現地での活動は、毎週、進捗状況をメールで報告してもらい、我々がチェックしてフィードバックします。

住友金属鉱山のインタビュー風景

―コアメンバーとは、どのような関わり方をするのですか?

小早川:コアメンバーはあらかじめ決まっているのでなく、「こういう企画をやりたいんだ」とイチから説明しながら自分たちで協力してもらえる人を現地で探します。相手に興味を持ってもらえないような内容であれば断られることもある。非常にシビアです。

特長として挙げられるのは、参加者がコアメンバーを動かす立場に立つ点でしょうか。先ほどご紹介した語学学校の新入学生向けのウェルカムツアーを例にとると、企画はコアメンバーと協力して進めますが、ツアー当日の新入学生への解説や対応はコアメンバーに担当してもらうといった具合です。

―現地の人を巻き込みながらリーダーシップを発揮するわけですね。
しかし、参加者は仕事経験がほぼない状態。ハードルが高いのでは?

小早川:ハードルは高いかもしれません。滞在中に複数回の活動をしてもらいますが、たいがい1回目は思うようにはいかない。しかし、2回目以降は文化的なバックグラウンドを加味したうえで進め方やコアメンバーとの接し方を改善していく。すると、研修を終えるころには何らかの成功体験を得るようになっています。

石川:仕事経験のない状態ではありますが、ALP活動そのものが実務のプロセスを進める際と同等の効果があると思っています。

海外拠点でマネージャーとして仕事をするときにも似たようなシーンに遭遇することがあります。ある仕事をローカル・スタッフにやってもらいたいとき、「やってください」とお願いするだけではダメ。どんな風に伝えればやってもらえるか、その仕事をやってもらうことによって彼らにどんなメリットがあるのか、そうしたことを考えながら進めていく必要がありますから。

小早川:本当にそうですね。異文化の人との協働を想像するだけでなく、実際に取り組めることは、とても学びがいがあると感じています。実際、参加者からは「自ら発信することで学べることが多いことに気づいた」「将来、海外で働くという意識が強まった」という声が寄せられました。

「企業は人なり」。
人材育成にかける思いとは

―語学学習と並行しながらのALP活動、さらに2ヵ月間ともなると、参加者のプレッシャーはかなりのものだと思います。内容が充実しているだけにこの研修を運営する側のプレッシャーもあるのでは?

小早川:確かに、参加者にやってもらうことが増えれば我々のやることも増えます。フォローアップにしても、普段のメールによる進捗確認のやりとりに加え、実施期間の中間地点で参加者一人ひとりとスカイプ面談を行っています。

石川:弊社に受け継がれてきた言葉に「企業は人なり」というものがあります。昔から人への投資にかなり力を入れていますね。お金だけでなく、時間もそうです。

住友金属鉱山のインタビュー風景

ありていに言えば、面倒見が良いということになるのでしょうか。もともと我々は鉱山業ですが、それこそ昔は鉱山のある地に社宅を作って働く人にそこに住んでもらい、そうして事業を運営してきました。事業と人との関わり方に、強い家族的なマインドがあるのです。

このマインドは今も弊社の社風に表れていますね。先輩社員が後輩を見守り、大切に育てていく姿勢がどの職場にも見られます。

住友金属鉱山のインタビュー風景 住友金属鉱山株式会社
人材開発部 人材開発担当部長 ダイバーシティ推進室長 
石川義治 氏

―「言うは易く行うは難し」ですが、もう何年も実行されていることにその企業風土を感じます。最後に今後の展望は?

小早川:入社3年目までの教育体系はかなり充実してきたと感じています。弊社の場合、3年目までは人材開発部が主導して教育を行いますが、そこから先の研修や育成プログラムは職種ごとに分かれ、各部門で行われます。部門教育で専門性を高めると同時に、人材開発部としても中長期的な社員の能力開発という視点でさらに取り組んでいければと考えています。

グローバル人材育成であれば、語学派遣プログラムなどの3年目までに受けた教育や経験に4年目以降も上乗せしていけるように、ある程度の整合性を取りながら計画的に進めていきたいです。

石川:研修も成長のきっかけを促しますが、日々の仕事の中でこそ真の実力は蓄えられていくと思っています。そして、実力が付いたら新たな仕事にチャレンジさせていく。今後はさらにOFF-JTとOJTのサイクルを円滑にし、一人ひとりが存分に力を発揮して働ける土壌を作っていきたいですね。

住友金属鉱山のインタビュー風景

異文化理解にとどまらず、参加者が能動的に行動する契機もふんだんに盛り込まれた同社の施策。決して「研修生まかせ」にするのではなく、企画・運営側も時間と労力を惜しまず、より良い機会となるように奮闘されている様子、その覚悟が印象的でした。

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CASE18住友商事

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CASE01サントリーホールディングス

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