case17新たな価値を生み出せる
変革者を育てる海外異業種体験

日本航空株式会社Japan Airlines Co., Ltd.

インタビュー風景

異文化との接点を通じ、
新たなサービスを創造するタネを獲得する

ーグローバルチャレンジプログラムを立ち上げたきっかけを教えてください。

2017-2020年度の中期経営計画において、JALグループが目指す将来像として〈「世界のJALに変わる」×「一歩先を行く価値を創る」=「常に成長し続ける」〉をキーワードとした「JAL Vision」を策定しました。「世界のJALに変わる」には、日本人のお客さまはもちろん、海外のお客さまにもJALグループを選んでいただけるようにならなくてはなりません。日本とは異なる文化や価値観をお持ちのお客さまは、どのようなお好みやご要望があるのか、どのようなサービスを期待されているかを把握する必要があります。

インタビュー風景
日本航空株式会社
人財本部 人財戦略部 グローバル推進室 室長 
蘆野 健 氏

2017年にスタートしたグローバルチャレンジプログラムは、異文化と直に接することで、グローバル基準で物事を考え、新たなサービスを創造していける人財の育成をめざしています。このプログラムでは、海外にある異業種の企業で3週間の実務経験を積みます。東南アジアやインド、米国など、参加者によって派遣国は異なります。

対象者は20代、30代。参加者の自主性を大切にしていますので、指名制ではなく、公募制です。毎回、15名前後を派遣しています。

課題は「異質なものとの接点」や
「チャレンジ精神」の乏しさ

ー御社は海外との接点が多くありそうですし、世界各国に自社拠点を持っていますから、そちらに派遣することもできると思います。あえて他社に送り出す狙いは?

実はみなさんが思っているほど、英語を使ったり、海外と接点のある業務は多くありません。また、航空業界において、安全と安心のプライオリティは何にも増して高い。確実で着実な仕事が求められ、失敗は絶対に許されません。こうした意識は事業のコアとして持ち続けるべきですが、その半面、新しいことにチャレンジしたり、既存のやり方を見直してみたりといったところに目が向きにくくなるのです。実際、JALグループの人財や社風に関するアセスメント結果を分析したところ、「謙虚」「配慮姿勢」「協働意識」という強みが見えてきました。組織人としては素晴らしいけれど、裏を返すと、変革者としての資質は乏しいともいえます。

グローバルチャレンジプログラムでは、異文化を知るだけでなく、ビジネスパーソンとしてのチャレンジ精神を磨くことにも重きを置いています。コンフォートゾーンと申しましょうか、慣れた仕事の内容や進め方を全て取り払い、まっさらな気持ちで異業種にチャレンジする。新たな気づきが得られるはずですし、それを自分たちの事業に活かしてもらいたいという期待もあります。

ー具体的に、どのような効果を期待していますか?

一つは、未来のビジネスのタネを探すきっかけになればと考えています。未知のことにアンテナを張ることで、ゆくゆくは新たな枠組みで事業を創造してもらいたいですね。

このプログラムはいわゆるスキルアップが目的ではなく、マインドを改革することを重視していますから、いつ、どれだけの効果が表れるかは明言しにくい。それでもなお、自社・自分の専門性を捨てた挑戦は、我々がめざす「一歩先を行く価値を創る」ときに、必ずや発揮されると信じています。

ー派遣先国は多岐にわたるというお話がありましたが、参加者の派遣先をどのように決定しているのですか?

参加者の共通点として、海外志向が強いことが挙げられますが、プログラムに期待することには個人差があります。本人のニーズをくみ取り、行き先や業種を精査しながら派遣先を決めていきます。

ー自ら望んで参加しているとはいえ、現地では、海外だからこそ、異業種だからこその壁を感じると思います。楽しいばかりでなく、苦労のほうが多いはずですが、参加者の反応はいかがですか?

派遣先では、言葉が違ったり、文化の差から思うように物事が進まなかったりと、次々とハードルが押し寄せます。試行錯誤しながらハードルを越えていくことで、のちに大きな自信につながるようです。

その国ならではの仕事へのスタンスに気づきを得たケースも多々あります。アメリカのシリコンバレーに派遣された参加者は、「経験させてもらう」といった受け身の姿勢は受け入れられないことを痛感したそうです。新参者や部外者であろうとミーティングなどでアイデアを出せない人は歓迎されず、「あなたは何ができるのですか?」という目で見られると話してくれました。

また、東南アジアに派遣された参加者は、仕事のスピード感が全く異なることに驚いたそうです。普段はスモールステップで着実にプロジェクトにあたっていたけれど、細部が完ぺきではなくても、走りながら考える現地のやり方が新鮮だったそうです。

飛行機模型

ー派遣期間は3週間。それだけの日数を現場から抜けるとなると、参加者の上司のみなさんの理解が欠かせないのでは?

所属長には人財本部から、「3週間も抜けてまで、なぜこの施策が必要なのか?」など、丁寧に会話を重ねて理解してもらうことを心がけています。また、帰国後には参加者を集めて社内報告会を行っているのですが、必ず所属長にも出席してもらい、部下が現地で何を経験し、どんなことを得たかを知ってもらう機会をつくっています。このプログラムを参加者本人だけの体験で終わらせず、上司を含めて職場全体で共有してもらうことを意識しています。

ー上司のみなさんも、部下の成長が楽しみなのでは?

部下が海外経験を積むことは上司も歓迎していて、ネガティブな意見は上がっていません。ただ、一つだけ挙げるとするならば、同じ海外派遣であれば、異業種ではなく、自社拠点に派遣して、会社のことをもっと知ってもらったり、本業の実務を経験してもらったほうがいいのではないかという声は寄せられています。

もちろん、それも大切なことですが、そもそもグローバルチャレンジプログラムは、変革者となりうる人財を育成することを目的とした施策です。多文化を尊重し、適応する人財が必要であることは、管理職研修をはじめ、日頃からいろいろな場でくり返し伝えてきました。その甲斐もあり、「会社全体が変わっていかなければならない」という意識が全社に浸透しつつあると感じています。

現状に甘んじることなく、
変革をリードしていける人財を輩出し続けたい

ー現状の課題や今後の展望を教えてください。

せっかく新しい見地を得たにもかかわらず、帰国後、自分の職場でその経験を具体的に活かせる取り組みが不十分だと感じています。社内報告会では「何をしてきたか」という報告だけでなく、それを踏まえて「今後、職場で何をしていくか」という決意を発表してもらっていますが、本人がそれを実現していくためのフォローまでは会社としてできていないことが現状です。

これまでに3度の派遣を行い、社内にはプログラム経験者が増えてきています。せっかく貴重な体験をしてきたのですから、それを役立てていける機会をつくっていきたいと考えています。

ー参加者が経験を活かしていけば、やがて大きな変革にもつながっていきそうです。

おっしゃる通りです。実際、参加者からは「ほかの業界の動向が気になり始め、より広い視野で考えるようになった」「渡航前は自ら動けないこともあったが、今はとにかくやってみて、行動しながら考えていけば良いと思えるようになった」など、頼もしい声が上がっています。

参加者の一人ひとりが変革の糸口をつかんでいるはずです。「自分たちがJALの新しい価値をつくっていく」という熱い思いを持っている人を増やしていくためにも、この施策を実施し続けたいと思っています。

インタビュー風景

これまで培ってきた組織としての「強み」が、実は事業領域の拡大やイノベーションを阻んでいるという事実を真摯に受け止めたことから生まれたこの施策。毎年、募集するたびにコンスタントに希望者が集まっているとのことで、若手社員の意識や送り出す側である上司の期待の高さがうかがえます。
「JAL Vision」という、めざすべき将来像を全社的に共通認識として持っているからこそ、社員のみなさまがこの施策の狙いやスタンスに価値を見出しているのかもしれません。

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