CASE01海外トレーニー経験でグローバル人材は育つ
もっと有効な活用を
サントリーホール
ディングス
株式会社Suntory Holdings Limited
![サントリーホールディングスのインタビュー風景](../images/case/suntory_index.jpg)
ーサントリーホールディングス社(以下サントリー)は、私たちがお付き合いする企業でも特にトレーニー制度に力を入れていらっしゃる企業だと感じます。最初にトレーニー制度の概要をお聞かせください。
2010年に第1期生を送って以来、6年間でのべ52名を派遣しました。対象層は25歳から34歳位で、北米・ヨーロッパ・アジア・オセアニアを中心に海外のグループ会社へ預けています。派遣期間は4月から3月の1年間。8月末に一時帰国して「中間報告会」に臨み、各部門トップを前に英語でのプレゼンテーションをさせています。また、派遣終了時の3月末に帰国した直後に、修了報告会があり、やはり役員を呼んでプレゼンテーションをしています。
![サントリーホールディングス人材開発本部 キャリア開発部 専任部長 國本 与志彦 氏](../images/case/suntory_p1.jpg)
人材開発本部 キャリア開発部 専任部長 國本 与志彦 氏
ーこれまでの6年間を振り返り、トレーニー制度の効果をどのように捉えていますか。
2009年、弊社はグローバル元年と言われるくらいに大きくステージが変わりました。部門によっては若くてもリーダーシップを発揮して、即戦力になる人材が必要になってきました。またトレーニーを預かってもらっている派遣先からも、語学力に加えて、ある程度その業務での経験がないと受け入れられないという声も上がってきました。
当然、私たちがトレーニーに求めるレベルは上がり、1年間のプログラムは非常に厳しく、難しくなってきました。その結果、トレーニー修了生の成長は目を見張るものがあり、即戦力として育ってきている実感があります。
その中でもトレーニー期間で最も成長する点は、リーダーシップです。海外のトレーニングですから当然外国語によるコミュニケーション力、異文化の対応力も高まります。しかし私どものトレーニーの場合は、特にメンバー層でありながらリーダーシップを非常に強く求めているのが特徴的です。 グローバルな人材は、年齢に関係なく、若くても年上の人をまとめていくことが当然求められるので、若くても遠慮せずに組織や役割も超えてリーダーシップを発揮することが重要だと思います。派遣先の組織の一員として仕事ができるようになるだけではなく、若いながらに「自分発のリーダーシップ」を発揮し、周囲を巻きこみ、影響をあたえながら、成果を出すことまでを求めています。このリーダーシップが、帰国後、英語や語学力以上に評価されています。
派遣者はこれまでの実務の中でマネジメントのようなリーダーシップを発揮したことはほとんどありません。したがって、派遣前に約半年間ぐらい毎月の集合研修を行い、徹底的に私ども独特のリーダーシップコンピテンシーという、普通はリーダークラスにしか適用していないものを勉強してもらいます。
派遣中は、『グローバル・ビジネスナビゲーション』に基づき、毎月Web面談や、レポーティングを通じてコミュニケーションをしています。継続的にモニタリングしながら、リーダーシップを理解させて、実践させるということをしています。
ー日本でリーダー経験のない人が、海外に行っていきなりリーダーシップをとろうとすると、とても大変だと思います。何かフォローアップをされていますか。
![サントリーホールディングスのインタビュー風景](../images/case/suntory_p2.jpg)
WiLLSeed グローバルHRD事業部 マネジャー 藤森
ー社員を海外に派遣するという取り組みに対し、駐在員のように責任が定まっていない中で送るというのはどうか、という意見もあると思います。反対意見などあがりませんか。
確かに責任が不明瞭ですので、言葉は悪いですが、現地法人からしますと現地では便利使いしやすい存在です。人が足りないといって、私どもの人材育成の思惑と違った運用をされる可能性もあります。
しかし、私どもの場合は世界中のグループ会社の人事の責任者を一堂に集めて、カンファレンスをやっています。そこでトレーニーに限らず人事政策について、目的、効果、事例を共有し、全員でワンサントリーということで、一つのグローバルな人材プールとして育成していこうというコンセンサスを得ています。そして、各社の海外の人事筆頭をキーにして、そこで現地の各ファンクションがトレーニーの誤った活用をしないようにウォッチしていくということをやっています。
![サントリーホールディングスの社内風景](../images/case/suntory_1.jpg)
ー受入側について、一年間、社員ではなく、いわゆる研修生として預かるというのは相当の負荷がかかりませんか。
それはもう大変なことだと思います。最初の頃は私どもも、受入側とのコミュニケーションは少なく、おっかなびっくり送っているようなところもありました。年を追うごとに派遣者へのゴールを高めに設定し、適切な観点を与えて育成してきた結果、派遣者が非常に良い成果を残し、それが派遣先でも評判になりました。今では、多くの派遣先が「日本人のトレーニーはみんなすごく良い人たちで熱心だね」あるいは、「言葉は最初頼りなかったけどね、本当によく勉強するし、なんでも聞くしね」「もうほんと一年間で見違えるようになったわね、やりがいがある」といってくれます。
例えば、私どものグループ会社にビームサントリーという会社がありますが、今年、トレーニーの受け入れについてお願いしたところ、前年の倍のオファーがきました。「俺のところにもトレーニーがほしい」という声もあったようで、受け入れ対象の地域も広がりました。帰国後に、日本国内でビームサントリーとの接点で仕事をしているメンバーには、改めてお呼びがかかって、本赴任したというケースも複数あります。
リーダーシップが育まれているので、帰国後もよい評価・評判をもらっていますし、活躍して事業にも還元されています。海外グループ会社でも「サントリーの社員ってやっぱり優秀だな」という認知が生まれています。人の育成だけではなく、組織と組織の間でも非常によい循環が回りはじめています。
![サントリーホールディングスのインタビュー風景](../images/case/suntory_p3.jpg)
ートレーニー施策をして、その施策の卒業生を欲しいといわれたら、社内でトレーニーに対する評価も変わりますね。
本当にそうですね。実は、部門長もトレーニー制度のことを、100パーセント理解しているかというと必ずしもそうではありません。ところがトレーニーから帰ってきた若者たちが、自分の部署で活躍する姿を見て、「あ、トレーニーのOBっていうのはいいな」となるわけです。そして「人事異動でこういう人が欲しい」という時にキャリア開発部に連絡があって、「トレーニーのOBでこういう人材はおらんのか」という相談がくるわけです。
私自身、以前からトレーニーという言葉は知っておりましたが実態は見えていなかったんです。しかし、トレーニーを担当してからまだ2年しか経っておりませんが、その効果を実感しています。今からグローバル化を積極的に進展される会社は、トレーニーを本腰を入れてなさるといいと思います。海外に限らず国内でも活躍する即戦力を育てることができます。
その際、担当レベルのやり取りだけではなく、部署をあげて、あるいは会社をあげてトレーニー制度について共通の理解を深め、派遣者に「もっと頑張れ」と声をかけ続け、そしてその成果を社内にどんどん宣伝していくところまできちっとやっていきますと、本当に素晴らしい戦力に育ちます。
ーたしかに中間発表会や最終発表会の時、社内のそうそうたるメンバーを集められてますよね。
そうそうそう!そうなんです。もちろん人事はヘッドに声をかけていますし、生産部門・研究開発部門など各部門の役員、そしてホールディングスの副社長まで、最前列にどーんと座っていただいています。派遣者の元上長や帰任先の上長の方々にも参加してもらっています。
8月の中間報告会では、英語でプレゼンテーションしてもらっています。英語の上手下手はありますが、実に堂々とプレゼンテーションするわけです。普段あまり英語に慣れてない部門の役員なんか来ますと、「えっ、うちの会社ってこんなに変わったの」と、おっしゃいますね。トップの皆さんにも、いずれこういう人たちの数がどんどんと増えて会社全体に影響を及ぼすようになりますよ、ということをご理解いただく機会になっていると思っています。
![サントリーホールディングスのインタビュー風景](../images/case/suntory_p4.jpg)
![サントリーホールディングス人材開発本部のスタッフ](../images/case/suntory_2.jpg)
毎年派遣されているトレーニーの育成も1つのゴールですが、トレーニー制度を起点に、いかにサントリーの社内をグローバル化できるか、派遣先に日本のサントリーを理解してもらえるかなど、グループ内・社内の広報活動も國本さんのお仕事の一部だということをよく理解できました。
私がこれまで、トレーニー制度について、400社を超える人事の方々からお話を伺う中、トレーニー制度はステイクホルダーが多く、運用に手間のかかる制度だという声を多く聞きました。しかし裏を返せば、ステイクホルダーさえ上手く巻き込めれば、全社のグローバル化を推進できる強力な制度になりえます。正に、その成功事例がサントリーだと感じました。
本日は貴重なお話をいただき、どうもありがとうございました。
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